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スタッフコラム

山室 コラム
2016年11月02日

アナログ素材とデジタル・テクノロジー

またまたビートルズの話なんですが、ビートルズ作品を管理する
出版社やレコード会社は、21世紀に入っても、あたかも実在する
アーティストの如く彼らの新作を制作しています。

昨年は映像作品を集めたブルーレイ(DVD)でしたが、
今年は、公式ライブ・ドキュメンタリー映画「ビートルズEightDaysAWeek」と、
1977年に発表した唯一のライブアルバム「ビートルズ/ライブ・アット・ザ・
ハリウッド・ボウル」(1965年&1966年の3回分の公演から選ばれた13曲)に、
「抱きしめたい」や「ベイビーズ・イン・ブラック」など
当時未収録だった4曲を追加したCD作品。あの敏腕プロデューサー、
ジョージ・マーティンの息子、ジャイルズ・マーティンが制作しました。
3トラック・マルチテープが現存していたそうで、この50年前の素材を
(単一の音声トラックから一部の音を削除したり、分離したりする)
『デミックス』というテクノロジーを駆使し、可能な限り鮮明な音色に
リミックスしたとのこと。ただクリアなだけではなく、臨場感も増し、
明らかにバランスも良くなっています。

まさしく現代の技術はデジタルです。ただ、過去の作品をリメイクする時に
一番重要なのはアナログ素材が、アナログ素材のまま如何に大切に保管
されているか。ということが言えると思います。

CDが世に出たのが1982年。その翌年、あるレコード会社では
テープによるマスターは転写やテープそのものの物理的劣化は避けられず、
空調が整った保管場所も必要なことから、今後はCDフォーマットに
ダビングすることで永遠に現存のクオリティーを保ち、保管場所も小さくて
すむようになる。なんてことを言っていましたが、デジタルフォーマットの
革新は進み、新しいフォーマット・機材も誕生し、CDフォーマットでは
素材を100%再現できないことが判明。元のアナログテープの保存が
如何に大切かを知ることになりました。
映画の世界でもデジタルリマスターが映えるのは、
フィルム(アナログ)のまま如何に良い環境で保存されているかでしょう。

結局のところ、将来においても価値をもつ作品に必要なことは何か?
もちろん一番大切なのは内容ですね。そして次に重要なのは、使用する
道具について現状の技術に飽き足らず、試行錯誤する研究心だと思います。
そういった点で、ビートルズは短い活動期間ではありましたが、
その作品群には、卓越した内容と特異な発想や、試み、そしてそのために
試行錯誤し、開発・習得した最先端の録音技術がセットになっています。
各曲の素材も豊富に残っているようです。

ということで、解散して45年以上経っても、新たな作品を制作する
だけの素材があり、商品価値があります。21世紀になった今でも新たな
ソフトが発表されるなんて、当時の彼らには思いもよらなかったでしょうね。
天国で、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンそして一番の功労者
ジョージ・マーティンは、今頃どう思ってるんだろう。