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スタッフコラム

山室 コラム
2015年05月13日

不便なLPレコードがくれたもの

前回のコラムで、武田鉄矢さんの「明るい終活のすすめ」のことに触れました。
それはそれで、団塊の世代の私にとって、なかなか考えさせられることなのですが、
先日友人から、具体的な問題の1つとして、そろそろ「身軽にする=持ち物を整理する」
っていうことが必要なんだ、と聞かされました。

家内からも、もう随分前から「荷物を増やさないようにしよう」なんて言われて
いるんです。さすがにレコードを処分せよ!との話は出ていないのですが、彼女から
厄介がられているのが、若いときから作り・増えてしまったビデオテープやカセット
テープの類です。
そりゃそうです。スタジオエンジニアの私もDVD・Blu-ray・CD・MP3なんてメディアが
当たり前になって、よっぽどの内容でない限り、ビデオテープやカセットテープを
引っ張り出そうなんて思わないですよね。なんてったって頭出しが大変です。

ということで、最近古いカセットテープやビデオテープ、レコードの整理を始めたんです
が、やはり思い出深いカセットテープに手が止まり、横道にそれて聴き入ってしまいます。
「これ!このテープにしか、ないんや!」「あっ、これも・・・」レコードにしても、
カセットテープにしても、かつて聴いたものは、次にどんな曲が出てくるか、
なんとなく覚えているものですね。

その時に、気が付きました。レコードは頭出しが容易でない。
テープは早送りに手間がかかる。だから好きな聞きたい曲だけを選んで聞くのでなく、
収録されている楽曲すべてを流れで聴いていました。
そうしたことが「知らない曲、いい曲」との出会いに繋がったんだと思います。
ま、若くてドンヨクだった。ということもありますけど。。。

つい最近、若いミュージシャンと話していた時のことです。彼曰く、「LPレコードの
時代には1曲目からおわりまでレコード全体に『流れ』があったんですよね。
A面の外周に針をおろす。A面が終わると、レコードをひっくり返してB面を聴こうと
する。その衝動を喚起するインターバルがあった。CDにはそれが無い。
ましてやダウンロードとなると、『流れ』もない・・・・」と、僕たちアナログマン?
と同じことを嘆いていました。受けて側とは別に、アーティストは今も曲順というものを
意識して制作していたんですね。
そんなことに気が付く若いクリエイター達が、また新たなデジタル時代のシステムの中で、
新たなフォーマットを産み出していくのでしょうか?楽しみです。