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スタッフコラム

明田 コラム
2015年03月25日

アナログ作業


最近、ある学校の先生方やデザイナーの方々と一同にお話しする機会がありました。

かつてデザイン作業は手作業でアナログ的に作業をしていました。しかし、現在は全てが
コンピュータを使ってデザイン作業をする時代になったという話題の議論になりました。

年配である多くの参加者はアナログ的作業を教える重要性とデジタルの万能性により
作品が上手に仕上がったと錯覚し自己評価を高くしてしまう危険性を訴えました。

私自身は大学時代8mm映画を撮影し、フィルムを切って編集し、手作業で作った効果音を
ダビングしました。こういったアナログ的作品作りは、全ての面でプロとの差がありすぎ、
自分の才能のなさを嘆きました。(私は本当に才能がありませんでしたが。)

最近の学生作品を拝見するとプロと変わらない品質で仕上げているものが多数
見受けられます。すごいなー、今の学生のレベルは、と驚嘆することもよくあります。
結局、これはデジタルのなせる技で、全てのものは平準化されるからでしょう。
プロとアマチュアの境目がなくなってしまうんでしょうね。

さて、議論の続きです。

デジタルとアナログの議論を聞いていて面白いことを感じました。

ひとつは、アナログは失敗したら潰す作業があることです。必死で書いた作文や丁寧に
書いた絵を、消しゴムで消したり、破いたりした思い出を持つ方は多いと思います。
この時、とても悔しく悲しい想いが伴います。同時に作り直す新たな作品はこれより
もっといいものをつくるぞっ、てモチベーションを高めます。

しかしデジタルには、この悔しさがないのです。作り直すこと自体が少なく、デリート
ボタンでファイルを簡単に消してしまえます。

思い入れた作品を自分の手で破いたりバツ印を入れたりすることがないのです。
デジタルの創作作業においては、自己否定して潰して再構築することなく、作品を
修正して仕上げていくことです。マイナス点は、作品を自ら否定する作業がないため、
悔しさによるモチベーションアップの機会が少ないこと、全く違ったアイデアで
再構築することがないことです。

二つ目は、議長役を務める先生がお話されたことですが、20年後、アナログ作業を
まったく知らない人たちがアナログ作業の大切さの議論をするだろうか、という
投げかけでした。たぶん、アナログを知らない人がアナログのデザイン作業を
教えれるわけもなくデジタル作業を基礎にデザイン作業を教えるでしょう。
アナログへのこだわりを捨てなければならないのかもしれません。

現代の私達は字を書くとき簡単にペンを使い、字を書きます。最近はいきなりワープロ
ソフトで文章を仕上げていきます。でも、先人たちは墨を磨る作業を大事に思い
精神統一をして文章を思考し筆を取ったと思います。
このことと同様に、未来の人々がアナログ的な作業のこだわりを忘れ去るのは、
仕方がないことであり必要ないことかもしれません。