【実証実験インタビュー】調理器具に設置するIoTセンサーの検証
実施主体
株式会社エフ・エム・アイ
実証実験内容
調理器具に設置するIoTセンサーの検証
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2024年4月から、株式会社エフ・エム・アイによる実証実験「調理器具に設置するIoTセンサーの検証」が、大阪・咲洲の複合商業施設ATC内の飲食店舗にて実施されています。今回は実施者である株式会社エフ・エム・アイの峯山忠之氏、上田一輝氏、氏家収士郎氏、細川賢治氏の4名に、実証実験の概要や目的についてお話していただきました。
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■株式会社エフ・エム・アイは、どのような事業を展開している会社ですか?
株式会社エフ・エム・アイは、主に海外の先進的な業務用調理機器を輸入・販売する事業を展開している会社です。特にイタリアを初めとした欧米メーカー製品を中心に、日本国内にはない調理機器を取り扱っています。それに加えて自社商品の開発にも取り組んでおり、業務用ドリップコーヒーマシンやジェラートマシンを主力商品として開発・販売しています。これらの商品はカフェチェーンや鉄道車両内などで利用されている実績もあります。
また、機器の販売のみならず、販売後のメンテナンスも自社で行い、販売からアフターサービスまで一貫したサポート体制を提供しているのも当社の特徴です。さらに近年はコンサルティング業務にも力を入れており、コーヒー店やジェラート店の開業支援セミナーを大阪・東京で開催し、顧客の事業支援も行っています。
■今回の実証実験を行うことになった「きっかけ」について教えてください。
まず、世の中にIoT技術が出てきた頃から開発部では「これは面白そう!」という話はずっと挙がっていました。ただ、なかなかその分野に注力できなかったこともあり、基礎実験だけを繰り返し行っていた状況です。
そんな中、当社では代理店などを通じて販売された機械が、実際にどこの場所(店舗)に設置され、どのように利用されているのか、正確にはわからないということは、常々言われてきた課題でした。トラブルや不具合の問合せがあり、メンテナンスや修理に伺うことで設置状況を初めて知るということもあります。そのようなことが起こる度に、「機器の設置場所はもとより利用データなどが事前に見えると便利なのでは?」という話が開発部の中で持ち上がり、それをIoT技術で実現してみようとなりました。そして、2023年春に社長からも正式なシステム開発のGOが出たことで、本格的に今回の実証実験の活動が始まりました。
■実証実験の概要について教えてください。
2024年4月からATC内のカフェ&ダイニング『goo-note(グーノート) 』様に協力いただき、厨房内にあるスチームコンベクションオーブンに、私たちが開発したIoTセンサーを取り付けさせていただいています。このIoTセンサーでは調理機器の温度、電流、電源、電圧電源電圧を20秒ごとに測定しており、それらのデータをクラウドサーバーに送り保存し続けています。元々のスチームコンベクションオーブンには通信機能はありませんが、当社開発のIoTセンサーはそれらの調理機器に後付することで、情報通信やセンサーデータの確認が可能となる仕様です。
■調理機器のデータが取得できることで、どのようなメリットが生まれるのですか?
メリットは当社とお客様の双方に生まれます。
当社では、修理・メンテナンスを行うサービスマン不足の課題があり、その解消につながると期待しています。現状ではお客様から問合せがあり、現場で初めて機器の状態を調査し、改めて修理に伺うことがほとんどです。それが事前にデータで状況が把握できていて「どこが壊れているのか」「どの部品が動作していないのか」がわかるだけでも、準備できることが変わっていきます。場合によっては、1回の訪問だけで対応が完了することもあるので、サービスマンの負担軽減につながると思っています。
また、そうした対応はお客様にとってもメリットです。物理的に調理機器が作動していない時間を短縮することで、業務が止まるのを防ぐことになります。さらに将来的にはサービスマンが行う処置を遠隔操作で自動化することも見据えていますので、そうするとさらに時間的コストの削減につながるはずです。
■実際に実証実験を行ってみて発生した課題はありますか?
当初は思い通りにデータ取得できていると感じていました。ただ、細かくチェックすると、所々データが途切れている部分があることに気づきました。原因を調査すると、データ送信する通信方式に問題があることが判明。当初はWi-Fiを使用していたのですが、周辺機器と電波干渉を起こしていたようです。その通信方式を、ノイズに強いサブギガ帯に変更する改良を実証実験期間中に実施しました。このようなことは、社内での実験では生じなかった事象なので、やはり実際の使用環境を想定した実証実験だから見つけられた課題で、価値があったと思っています。
■将来的には、どのようなサービスとしていきたいですか?
現状で思い描く完成形としては、サービスマンが現場に行かずともトラブルが解消されるサービスです。オンラインで利用データを確認し、不具合の原因や対処方法が判断でき、遠隔操作もしくはお客様の簡単な操作でトラブル対応できるようになれれば良いと思っています。
さらに、調理機器の利用データを収集することで、さまざまなことにも応用可能です。利用データのパターンを解析すれば、機器の異常を事前に検知することもできるでしょうし、壊れにくい正しい使い方のアドバイスもできると考えています。またオーブンや大型冷蔵庫などの調理器具は待機電力を多く消費するので、お店での利用傾向に合わせて、どのように使用すれば省エネにつながるかなども、ご案内できるかもしれません。
まだ、データの利用用途については検討段階ではありますが、電力コストや食材ロスなどの分野において、社会貢献できるサービスにしていきたいと思います。
■ATCでの実証実験を行った感想は、いかがでしょうか?
フィールドテストを初めて実施させてもらったのが、今回の実証実験でした。きっかけとしては、私(峯山氏)が実証実験できる場所をネット検索していた時に、今回の支援プログラムの存在を知って、事務局に連絡させていただきました。申請手続きや設置作業などもスムーズに進行するようにサポートいただき、本当に助かっています。さらに、有り難いことにご協力いただいた『goo-note(グーノート) 』様が、偶然にも当社の製品をお使いいただいていたので、その面でもとても良い御縁でしたね(笑)。また、現在はATC以外にも全国10ヶ所で実証実験を実施中なのですが、それについてもここでの初事例があったことで、他の場所でもスムーズに理解してもらったように感じています。
■今後の予定について教えてください。
私たち開発部のイメージでは、まず2024年はこのような実証実験を重ねてデータの有効性などを実感してもらい、社内での認知度を高めていきたいと思っています。営業担当者やサービスマンなどが「使いたい!」というところまでシステムを仕上げることが、2024年度の目標です。そして2025年には、実際のお客様にも展開し、利用していただけるような流れになればと考えています。普及や販売などにおいて、ご興味を持って、ご協力いただける企業様が現れれば、一緒に取り組んでいきたいですね。
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)