【取材レポート】5G X LAB OSAKA 「名実ともに5Gへ」 人気展示の完全5G化が示す、産業DXの新たな基準(Voysys)

大阪・南港のソフト産業プラザTEQS内に開設された「5G X(クロス) LAB OSAKA」。ここは5Gを活用する製品・サービスの開発を支援し、テクノロジーとビジネスを共創するためのオープンラボです。2020年の開設から5年が経ち、多くの企業関係者や開発者が訪れている、このラボの人気プロダクトの1つが大きなアップグレードを実施。5G X LAB OSAKAの中でも人気の高い「遠隔操縦体験システム(Voysys)」が、これまでのWi-Fi運用から、ついに「プライベート5G」による完全稼働へと移行しました。
今回のレポートでは大阪市、公益財団法人 大阪産業局、一般社団法人i-RooBO Network Forumと共に、同施設の運営団体であるソフトバンク株式会社の岡田和也氏(IoTプラットフォーム本部 5Gサービス統括部 5Gサービスアーキテクト室)の解説と合わせて、進化した5G X LAB OSAKAの魅力をお届けいたします。
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■「注釈」のいらない、本物の5G環境へ
これまでは施設のインフラ上の制約から、デモンストレーションの一部はWi-Fiを経由して行われていました。来場者に「5Gラボ」としての可能性を説明しながらも、「このデモ機自体は実はWi-Fiで動いています」と注釈を入れざるを得ない──そんなジレンマがついに解消された、と岡田氏は話します。
「遠隔操縦体験システム(Voysys)」は、カメラを装備したラジコンカーからの映像を大型モニターで見ながら遠隔運転のデモンストレーションを体験できるプロダクトです。運転席に座ると、ラボ内に駐車されたラジコンカーから見える世界が目の前に広がり、ペダルを踏めばラボ内をラジコンカーで自由にドライブできます。視界となる映像はネットワークを経由して大型モニターへ配信され、運転者のペダルやハンドル操作もネットワーク経由で情報が送信されています。
その「遠隔操縦体験システム(Voysys)」が今回のアップデートにより、車体に搭載されたモバイルルーターを経由し、ラボ内に構築されたプライベート5Gで直接通信を行う仕組みに刷新されました。「5G X LAB OSAKA」という名の通り、5Gのポテンシャルを一切のフィルターなしで体感できる環境が整ったということです。これは単なる展示の更新というわけではなく、産業用ネットワークとしての5Gが、実用段階として「当たり前」に使えるフェーズに入ったことを示唆しているとも言えるでしょう。

■速度ではなく「安定」を。産業用5Gの真価
この刷新で注目すべきは、通信の「質」です。 使用しているデータ容量は数Mbps程度と決して大きくありませんが、5G特有の技術である「ネットワークスライシング」を活用しています。これは、いわば混雑した道路に「緊急車両優先の専用レーン」を作るようなものです。周囲の通信環境に左右されず、常に安定した通信品質を確保できます。
取材中、岡田氏はその違いをこう表現しました。
「一般的なWeb会議なら映像が止まってしまうような容量でも、この環境なら驚くほど滑らかです。途切れない、止まらない。これが産業用5Gの強みといえます」

■「5G」という言葉にとらわれない、課題解決の場へ
しかし進化した「遠隔操縦体験システム(Voysys)」も、あくまで5G X LAB OSAKAに来場していただくフック(入口)の一つという考え方です。今回の取材で岡田氏は「5G X LAB OSAKA」の今後のあり方についても話してくれました。
「ビジネスにおいて5G技術が必要だから来場する、というだけではなく、広くDX(デジタルトランスフォーメーション)全般の相談に来ていただきたいのです。5Gはあくまで手段の一つ。人手不足や業務効率化といったビジネス課題に対し、このラボにあるソリューションがどう役立つか、そこからディスカッションを始めたいと考えています。2020年の開設当初と比べても、かなり多くの企業様から多彩なソリューションを展示していただいておりますので、何かしら皆さんのビジネスにも活用できるものがあるかと思います」
また5G X LAB OSAKAでは、支援する企業が年度ごとに入れ替わるため、展示されるソリューションも常に新陳代謝を続けています。来るたびに新しい技術との出会いがあり、ビジネスのヒントが見つかる場所へと進化しているのも、このラボの特徴です。
「『自社の工場で似たようなことができないか?』『人手不足解消に遠隔技術を使いたい』。そんな漠然とした課題感をお持ちの方こそ、ぜひ一度足をお運びください。まずは新しくなった5Gの遠隔操縦車の試乗体験からでも構いません。そこから皆さんとのビジネスの可能性について話し合いましょう。進化した5G X LAB OSAKAで、皆様の来場をお待ちしています」

【取材後記】
設立から5年。オープン当初からこの「5G X LAB OSAKA」を取材し続けてきた私としても、今回のアップデートやラボ内にあるさまざまなプロダクト展示の増加には、驚かされています。
今回「遠隔操縦体験システム(Voysys)」にて実際に操縦させていただくと、そのレスポンスの良さは「通信している」ことを忘れさせるほど自然でした。進路が行き詰まった際に行う「バック走行」も、リアリティに溢れたものでした。
このような技術は、パンフレットやWebの説明を見ているだけや、スペック表の数字を眺めるだけではなかなか腹落ちしません。しかし、こうして実際にハンドルを握り、思い通りに動く車体を目にすれば、理屈抜きに「これならウチの現場でも使えるかもしれない」という発想が湧いてくるはずです。
真の意味で「5Gの実験場」として成長し続けるこのラボが、今後どのような産業DXの種を生み出していくのか。引き続き、その進化を追いかけていきたいと思います。
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

