建築に必要不可欠な検査時間を短縮し記録不要を実現する製品を開発
LBコア株式会社
代表取締役 中馬 行美氏
AIDORプログラムを通じて進めているビジネスは、どのようなものですか?
建築に必要不可欠な検査時間を短縮し記録不要を実現する製品を開発
当社は、建物が水平垂直に建っているかどうかを計測する「レーザー自動レベル機器」の専業メーカーです。昔は紐に錘をつけた「下げ振り」を基準として計測していました。2000年頃から「レーザー機器」が浸透し始め、当社では超小型「ラインボーイ」を開発、発売しました。2012年に「レーザー下げ振りラインボーイDポイント」を商品化しています。
しかしこの商品の販路拡大でネックとなったのが木造建築のしなりへの対応です。鉄骨の建物ではピタッと止まるレーザーポイントが、木造建築では木のしなりに合わせて揺れてしまい、正確な計測が困難でした。この問題を解決する製品とその事業化を目的にAIDORプログラムに参加し、大阪府立大学工業高等専門学校の土井智晴先生と学生さんたちの技術サポートを受けて、揺れ補正を行う「バイブレススケール」のビジネスプランを完成しました。
参加前の約一年、木造の揺れに対し「ラインボーイDポイント」本体の揺れを抑える方法について実験を繰り返していました。しかし思うほどの効果は生まれませんでした。その後レーザー光の揺れの規則性に注目し、受光器側にセンサーを組み込み、データ解析によって中心位置を検出するという解決法が見えてきました。今後はこの「バイブレススケール」で処理されたデータが作業者のスマートフォンにデジタル表示され、インターネット回線を経由してデーターベースに蓄積され、手書き作業せずに一括管理できるIoTシステムを構築する予定です。
AIDORに参加したきっかけと、参加当時のビジネスレベルを教えてください
まさに、私の知りたかったことが学べたAIDORプログラム
私は文系出身で、これまでの製品開発もほとんど独学でやってきました。しかし当時直面していた揺れ対策はメカを主体とした既存技術の延長線上では解決できないと思い、受光目盛のセンサー化について大阪府立大学工業高等専門学校の土井智晴先生に相談していました。
また社会がますますIoT化されていくことも感じていましたので、本格的に勉強しておきたい気持ちがあったんです。そんな時に土井先生から「AIDORプログラム」へのお誘いがありました。
試作用のセンサーデバイスの価格も昔に比べて下がっており、オープンソースソフトウェアを利用することで、私たちのような中小規模事業者でも取り組みやすい環境になっていることも感じていました。
IoTの基本構成、周辺情報を学びつつ、ビジネスプランとしてブラッシュアップできるかもしれない!そんな思いでAIDORプログラムへの参加を決めました。私にとっては、まさに求めていたものが、ちょうど天から降ってきた感覚です(笑)。
参加した感想と、どのような部分がメリットだと感じていますか?
想いを伝えることで、不安が自信に変わりビジネスが進み出した
座学での講義やワークショップを通じて、IoTに関する多くの知識を学ぶことができました。私としては、今回のビジネスプランを“アイデアレベル”ではなく、実際に新規事業としてクライアントに提案できるレベルにしたかったんです。それだけに、本業と並行して顧客への聞取り調査、市場調査、ピッチの準備を進めることは大変でしたが、それだけの成果はあったと感じています。
参加して良かったのは、周囲からのフィードバックがあったことです。例えば、ピッチは自分も行いますが、皆さんのピッチも聞きます。そして、メンターの先生方やコーディネーターの皆さまを含めて、お互いに感想や質問を投げあうので、自分だけで進めていると見逃しがちなところまで考えるきっかけとなりました。なんとこの「バイブレススケール」という名前もピッチ練習のなかでメンターの先生に命名して頂いたんですよ!
自分の想いを話す機会が増えたことも参加したメリットです。最終日のデモデイやIoT・ロボット関係のイベントで、私の想いやビジネスプランを伝える機会をいただきました。参加前は、想いはあっても自信はありませんでした。どちらかといえば不安の方が大きかったくらいです。しかし、メンターの先生方から「中馬さんらしさを出せば大丈夫です」というお言葉や、同期メンバーのピッチを聞いて、ビジネスプランだけでなく、その人の生き様を伝えることが大切だと感じました。プログラム終了後にメンターの先生方から「技術面や資金調達など、必要があればいつでも言って下さい。」と言ってもらい、ビジネスはこのようにして進んでいくのだと実感しました。想いを伝えることで、道は開けていくのだと思いました。