本業で感じた悩みをIoTでビジネス化!
浜田化学株式会社
代表取締役 岡野 嘉市 氏
AIDORプログラムを通じて進めているビジネスは、どのようなものですか?
本業の効率化やコスト削減から発展した「リサイクルタンク×デジタルサイネージ」
当社の本業は、飲食店やコンビニエンスストアの使用済み油の回収・リサイクル事業です。天ぷらや揚げ物などに使用された油を回収し、家畜の飼料や車の燃料などに再利用しています。創業から50年で、兵庫県尼崎市に本社を置き、関東から中国地方にかけて営業所を構えて、全国シェアが8%程度となっています。また同時に、居酒屋やタイ料理店などの飲食事業も展開しています。その飲食事業において苦労しているのが、広告や宣伝です。特に、現在の看板広告の主流になりつつあるデジタルサイネージを導入しようと思った際、コストがかなり掛かることを知ったのが、今回のIoT事業のきっかけになりました。
当社が進めているIoT事業は、使用済み油のリサイクルタンクをデジタルサイネージの架台として活用する「リサイクルタンク×デジタルサイネージ」のビジネスです。当社の主要取引先であるコンビニエンスストアには、使用済み油の保管場所の確保と、季節やキャンペーンごとにPOP・ポスターなどの広告物を変更する時間と人材のコスト課題があります。それらの課題を解決するものとして、「リサイクルタンク×デジタルサイネージ」を作りました。まず通常は店舗のバックヤードに置かれているリサイクルタンクを、店頭に設置するサイネージの架台と一体化されることで、バックヤードスペースは効率化されます。またリサイクルタンクを大型化することで、回収頻度が減り、さまざまな面でコストダウンにもつながります。加えて、サイネージでは季節や時期に合わせた広告の変更が容易に可能です。さらには設置店舗の広告・告知だけでなく、他社の広告を表示することで、広告収入を得ることもできます。
現在は、150リットルタンクに43インチのサイネージを付けたプロトタイプ機を製作し、導入実験を行っています。まずは自社の飲食店に設置し、順次他社へも導入を進め、2019年夏頃には本格的な商品化を目指しています。本業での主要取引先が約2万件あるので、まずは1/4の5000台の普及を目標にしています。
AIDORに参加したきっかけと、参加当時のビジネスレベルを教えてください
先端技術のノウハウや人脈を求めて参加を決意
昔、大阪産業創造館の経営者塾に参加していたので、そのつながりでAIDORアクセラレーションプログラムを知りました。その当時に思っていたのが、日本の人口減少に伴って、クライアントの数も減り、社内の働き手も不足していくということでした。そうした社会現象の中で収益を上げていくには、さまざまな面で効率化を行わなければいけません。そして、そのためには先端技術が必要不可欠だと感じていました。“変わらなければいけない”という意識はありながらも、社内にはそれら先端技術のノウハウが無く、プロジェクトが滞っていたタイミングで、変化を求めて参加を決めました。
参加当時、「リサイクルタンク×デジタルサイネージ」のイメージは持っていましたが、形は何も生まれていない状態です。正直な話、製品の大まかな形は社内の工務部でも作れるとは思っていました。ただ、製品をブラッシュアップしていく過程で、IoTやセンサーなど先端技術が必要になることはわかっていたので、それらの専門分野におけるノウハウや人脈がほしかったというのが、参加当時の気持ちですね。
参加した感想と、どのような部分がメリットだと感じていますか?
IoTビジネスを学ぶことで、本業においても相乗効果が生まれた
「人に伝わる形にすることの大切さ」を学びましたね。AIDORアクセラレーションプログラムでは、「IoTの基礎技術」と、そのIoTをビジネス化するための「ビジネス論」が学べます。基礎技術の講義によって、IoT技術をわかりやすく学べたことも大きかったですが、私個人としてはIoTで商売をするための営業方法やプレゼン方法などのビジネス論を学べたことの方が大きかったですね。何よりも、それらのビジネス論はすぐに本業でも役に立ちました。AIDORで学ぶに連れて、提案書の作り方も変わり、クライアントへわかりやすく伝えることができるようになったので、商談がまとまるのも早くなりました。プレゼンテーションにおいても、“決定してもらう”ということから逆算した構成を考えるようになり、より営業成果も出やすくなっています。
それとAIDORに参加することで「締め切りができる」というのもメリットです。私たちのような中小企業は社内プロジェクトを立ち上げても、本業を含めたさまざまなことを同時進行させているので、どうしてもプロジェクトの進みが悪くなります。その点、このプログラムに参加すれば、周囲の環境も含めて「この期日までにやらなければいけない」という気持ちにさせてくれます。今回もイベントに合わせて、改良したプロトタイプ機を何とか仕上げました。そして完成した後は、「もっと出来たのに…」と後悔するんですね。その後悔も、私は大事だと思います。この結果を糧に、次はもっとやろう!という気持ちになりますから。新規プロジェクトに取り組む際の、会社の体制づくりも見直すこともできましたし、参加したメリットは多かったと思います。