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2020年04月23日その他

AIDORデモデイ2020レポート【後編】

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⑧集客を革新する等身大のコミュニケーションデバイス「デナポータル」

チーム名:株式会社デナリパム
登壇者:井本直正氏
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イベントブースの集客課題について「目に止まらない」「引き付けられない」「引き止められない」の3項目を挙げる井本直正氏。井本氏は、まず既存の集客ツールである3タイプのサイネージ(据え置き・壁埋め込み・3面ロボット)を検証。そこで「遠くからでは目立たない」「映像だけでは素通りされる」「細かな対応ができないので引き止められない」という課題を発見しました。

そして井本氏が開発したのが、集客を革新する等身大のコミュニケーションデバイス『デナポータル』です。デナポータルは等身大の大型ディスプレイを採用し、遠くからでも目に止まります。映像に合わせて動く自動応対技術で、相手を引きつける“動く挨拶”が可能です。さらに、遠隔操作で人に合わせたトークや動きを見せることで、相手を引き止め続けることもできます。

このデナポータルを生み出すには自動応対を可能とする「画像認識AI」や等身大映像を制御する「画像処理」、キャラクターの動きを制御する「ロボット技術」などが必要です。井本氏のチーム『株式会社デナリパム』は、これらの技術を高度に組み合わせて実践することができます。

効果検証として、デナポータルを2019年大阪ATCロボットストリートに出展した際には「遠くからでも目に止まった」「動く挨拶でお客様を引き付けた」「遠隔操作のトークで子どもたちを引き止め続けた」という結果を得ることができました。

ビジネスモデルとしては、イベント出展者にデバイスやキャラクターのレンタル提供と運営サポートを行う予定で、販路拡大のためにネット広告への出稿と、パートーナー企業を通じた営業展開を想定しています。中でも営業活動を担うパートーナー企業との強いつながりを求めているそうです。

ターゲット市場は展示会・イベントに関わるすべての業種で、まず特性が近いサイネージ市場に狙いを定めて事業展開を図っていきます。井本氏の試算によれば、2025年に3,000億円以上が見込まれるサイネージ市場において、5年後には年商16億円、営業利益8億円を目指しています。

⑨「セルクリ!」~泊まった部屋を、清掃したらお得に!~

チーム名:太洋工業株式会社
登壇者:高嶋愛里氏
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チーム・太洋工業株式会社の高嶋愛里氏が新規事業として、ホテル向けに発案した新概念のサービスが「セルクリ!」です。

発案の背景にはホテルと利用者が抱える、それぞれの課題がありました。ホテル側の悩みは「スタッフの人員不足」「清掃が重労働」「リピーター客の獲得」であり、利用者側は「直前予約が取りづらい」や「少しでも良い部屋に泊まりたい」という悩みや希望を持っています。それらの課題を解決するのが「セルクリ!」です。

「セルクリ!」は宿泊した利用者が泊まった部屋を清掃すれば、お得な優先予約権やクーポン券を取得できるサービスです。基本的な仕組みはLINEのプラットフォームを使用します。宿泊利用者は『LINE Beacon』でホテルの部屋情報と本人情報を確認、これにより不正も防止されます。さらにLINE経由で送られるマニュアルに従って清掃すれば完了です。依頼する清掃は「ゴミ集め」「シーツ類を剥ぐ」「シーツ類の回収」というシンプルな3ステップですが、これによって清掃員の通常20分掛かる清掃時間が、15分に短縮されるそうです。

ビジネスモデルとしては、「セルクリ!」からホテルへサービスを提供し、部屋料金の5%を貰い受けます。その上で「セルクリ!」から宿泊利用者に向けて各種クーポン券を発行する予定です。

「セルクリ!」の導入によって、清掃員の労働環境の改善や、利用者の部屋を使う責任が向上することは、太洋工業株式会社の掲げるSDGsの理念にも通じていると、高嶋氏は話します。

サービス展開は大阪を中心に広める考えで、2025年には大阪のビジネスホテル480棟の15%へ導入し、売上高8,000万円を目標としています。

⑩大規模なハウス栽培農家の課題を解決「Hydrobot」

チーム名:Hydrobot
登壇者:福塚淳史氏
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1ha以上の大規模ハウス農家の抱える悩みに着目した、関西大学の福塚淳史氏。福塚氏は農業経営者の悩みとして、次の3つの課題を挙げました。「病害虫の影響で野菜の品質や収量が低下する」「農薬散布作業で気分と健康を害する」「生育判断を誤ると野菜が育たず収量が低下する」という3項目です。

この課題を3つの機能を有する小型ドローンで解決するソリューションが、今回発案した「Hydrobot(ハイドロボット)」となります。小型ドローンを利用することによって、定点カメラや走行型ロボットでは見ることができない葉裏などの死角も確認可能です。また複数台の小型ドローンを使い、ハウス内を迅速に探索することで、病害虫の繁殖を防ぐ狙いもあります。

Hydrobotには、課題解決のための3つの特徴的な機能があります。

1つ目は病害虫をカメラで探索する機能で、ハウス内に発生したコナジラミなどの病害虫をドローンカメラで早期発見し、野菜の品質や収量の低下を防ぎます。2つ目は、ドローンで発見した病害虫に農薬を散布する機能です。この機能によって、効果的に農薬を散布し、使用量を削減しつつ、野菜の価値を高めていきます。また人間に代わってドローンが農薬散布するので、健康被害を無くすことにもつながります。3つ目は、ドローンで撮影した茎・葉・花の画像を元に生育判断を支援する機能です。この機能はデータ解析企業と提携することで、経験や勘だけに頼らず生育判断ができる情報を農家へ提供し、判断ミスによる品質や収量の低下を防ぐことになります。

ビジネスモデルとしては、同チームが大学やドローン企業、データ解析企業と提携してサービスを開発。顧客となる農家に月額7万円でサービス提供していきます。今後は2年目を目処にサービス提供を開始し、5年目には売上高1億7,000万円を目指していきます。

⑪「CyTe-WaY」みんなで作り上げる施設内道案内アプリ

チーム名:大阪府立大学チーム
登壇者:竹山柊氏
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大阪府立大学チームの竹山柊氏が発表したのは、みんなで作り上げる施設内道案内アプリ「CyTe-WaY(サイトウェイ)」。同チームは、GPS情報だけでは解決できない施設内の詳細な道案内に着目し、本ソリューションを開発しました。

竹山氏らのチームが、商業施設内で道に迷った人へヒアリングした結果、多く挙がった意見は「地図上の位置と自分の見ている景色がリンクしない」というものでした。そこで発案した施設内道案内アプリの「CyTe-WaY」には3つの特徴があります。

1つ目は、写真付きでより確実に伝える「スポットルート検索」です。「CyTe-WaY」に表示される商業施設マップには複数のスポットが登録されており、それらを指定することで現在地からの経路を写真付きで案内してくれます。複数箇所のスポットを順番に指定することで、アプリに表示される写真を見ながら順番通りに経路を辿っていくことが可能です。

2つ目の特徴は、それぞれのユーザーの投稿で便利になる「スポット登録」機能。自分が登録したい場所に自由にスポット登録が可能なので、ユーザーが使えば使うほど便利な道案内アプリに成長していきます。さらに、登録したスポットは他のユーザーに共有されるので、自分の知らなかった別のルート開拓にも役立ちます。

最後の特徴は、全ユーザーの評価でより正確な地図を作る「スポット評価」です。各スポットには5段階評価とコメント欄を設け、より信頼性の高いスポット情報を作り出します。写真とスポットの内容が違っている場合にはスポットを削除し、より正確性の高いものにしていきます。

想定するビジネスモデルとしては、エンドユーザーにアプリを無料提供。ユーザーの動きや利用情報などの分析結果を、対象となる商業施設へ提供することで、対価を貰い受ける流れです。商業施設にとっては、ユーザーの流れを正確に把握できるので、広告や販促展開にも役立つ情報が提供できると考えていると、竹山氏は説明しました。

⑫言葉セラピーロボット(メンタルボッチ IQ30)

チーム名:AI Kuchan Labo.
登壇者:芥川真一郎氏
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ストレス社会である現代社会の日本では心療内科の受診者が年間400万人を超えると言われています。その中には社会復帰できない人もおり、その原因は最も身近なはずの家族、会社、医師との関係が上手く保てないことにあると、芥川真一郎氏は提唱しています。

そこで芥川氏は「社会復帰に向けて孤独と闘っている人をサポートするロボットを創りたい」と考え、「言葉セラピーロボット(メンタルボッチ IQ30)」の開発を思いつきました。

芥川氏が精神疾患を抱えている方や心療内科の医師、この問題に取り組むNPO法人にヒアリングした結果わかったのが、精神疾患の方がひとりぼっちで過ごす“ロンリーナイト”が危険であるということです。ロンリーナイトになることで、アルコール・薬物依存やリストカット、幻聴、ふらふらと彷徨うなどの行為に行き着くことが多くなり、より社会復帰が困難になると芥川氏は話します。

例に挙げられた女性の場合、1ヶ月のうち5日間はコミュニティに参加しますが、残りの26日間はロンリーナイトとなります。この26日間を埋める方法として、大阪大学教授にアドバイスを仰ぎ、「元気に挨拶してくれるロボットがいるだけでも効果があるのでは?」という仮説が見え、芥川氏は言葉のもつ力に注目。ロボットの利用シーンを“元気に挨拶する、相槌を打つ、否定的なことは言わない、話した言葉を反復する”ということだけでも、ロンリーナイトを乗り切る手助けになると考えました。さらに、この仮説で関係者へのヒアリングを重ねたところ、好意的な反応をいただき、医師やNPO団体などからも開発に協力したいとの声をもらっています。

現在、すでにヴイストン株式会社のコミュニケーションロボットを使用した共同検証実験を進行中です。現状では、事前準備した会話パターンを被験者に体験してもらい、意見や感想のフィードバックをいただき、会話パターンの改良を重ねています。

収益構造は、AI Kuchan Labo.から家族会やNPO法人へレンタル提供し、各団体より利用者への貸し出しを行ってもらい、同社から利用者へサービスを提供する流れです。アクションプランとしては1年目でプロトタイプを開発し、2年目には製品を完成させ、3年目以降に家族会やNPO法人を通じたサービス展開を目指しています。

⑬太陽光発電の余剰電力の売買で地域活性化「泉州電力プロジェクト」

チーム名:泉州電力プロジェクト
登壇者:喜田勉氏
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泉大津市在住の喜田勉氏が提案したのが、太陽光発電の余剰電力の売買で地域活性化を図る「泉州電力プロジェクト」。喜田氏の地元である泉州地域の商店街にお金がまわり、地域を盛り上げるのが本プロジェクトの狙いとなっています。

喜田氏が本プロジェクトを思い立ったきっかけは、2019年11月に太陽光発電の余剰電力の買取契約を終了する世帯が増加するというニュースを見たことでした。このいわゆるFIT(固定価格買い取り制度)後の電力を活用した地域活性化の仕組みを、喜田氏は考えました。

「泉州電力プロジェクト」ではFIT後、1kWhあたり8円となる売電価格を、11%高い9円で全量買取します。さらに、契約者には電気使用料金を17%安く提供し、毎月の電気使用料金の1%を泉州地域の商店街で利用できる“地域コイン”で還元します。この仕組みによって、契約者を商店街に送客し、地域活性化を図るのが「泉州電力プロジェクト」です。

送客される商店街の店舗にはスマホ、電気自転車、電気自動車の充電所を設置し、来店や購買促進のフックとします。商店街の店舗にも電気使用料金を安く提供して、充電所のレンタル料金を別途貰い受ける形を想定。また店舗にも毎月の電気使用料金の1%を“地域コイン”で還元することで、商店街内での購買活動も活発になると、喜田氏は考えています。加えて、地域特産物を取り揃えたショッピングモールサイトを立ち上げ、そこでも“地域コイン”を利用可能とすることで、地域外の購入者にもアプローチする考えです。

「泉州電力プロジェクト」によって、電気を使ったサービスを創出し、活性化した地域社会と、輝く未来の街づくりを目指していくと、喜田氏は発表を締めくくりました。

【まとめ】

新型コロナウィルスの影響により、オンライン会場を開設して実施された「AIDORアクセラレーション」受講生によるデモデイでしたが、例年に勝るとも劣らない“新しいビジネスプラン”が続々と発表されました。

それぞれの受講生は、約5分間というピッチの中では語り尽くせなかったビジネスへの想いや、さらなる成長の可能性も秘めています。

もし、ご興味をあるビジネスプランを見つけられましたら、IoT・ロボットビジネス創出プログラム「AIDOR(アイドル)共同体」事務局まで、ご連絡ください。

AIDORアクセラレーションに関するお問合せはこちら

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