AIDORデモデイ2020レポート【前編】
「AIDORアクセラレーション」は、IoTサービスなどのテクノロジーを活用した約4ヵ月のビジネス創出プログラムです。
『IoTで社会課題を解決したい』という熱い想いを持った起業家や企業の新規事業担当者、学生たちが参加し、早期のサービスインをめざしてビジネスプラン作りに取り組んできました。これまでのプログラム卒業生からは、9チームがサービスインしています。
本来は、令和2年3月6日(金)に「AIDORデモデイ 2020テックビジネス最前線!」の成果発表会で、多くの来場者を前に受講生が熱いピッチを実施する予定でしたが、新型コロナウィルスの影響で発表会が中止となり、動画配信サービスを利用したオンラインピッチに変更となりました。
しかし、オンラインピッチでも受講生たちのIoTサービスに対する熱い気持ちは変わりません。今年度は全13チームが約5分間のピッチにチャレンジ。本レポートでは、各登壇者のピッチ内容をダイジェスト版でお届けいたします。
①次世代の洗濯代行業
チーム名:チーム西埜・朝尾・南
登壇者:西埜隆文氏
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西埜氏、朝尾氏、南氏の3名で取り組んでいるのが「次世代の洗濯代行業」。奥様と共働きの西埜氏が日々の洗濯を奥様任せにしてしまったことが、ビジネス考案のきっかけです。チームは時間と手間のかかる家庭洗濯を1回60分、週2回の洗濯でも年間108時間のコストと試算。社会的にコインランドリーは増加傾向で、共働き世帯も増えていることもあり、家庭洗濯から解放されることにビジネスチャンスを見出しました。現在の家事代行や洗濯代行が、一般消費者にはまだ高価なサービスであることから、低価格で気軽に利用できる「次世代の洗濯代行業」の実現を目指します。
チームは低価格を実現する方法として「既存のコインランドリーの活用」と「集配・精算・安全のスマート化」を提唱。従来の洗濯代行業が1ヶ所の洗濯施設に集めて洗濯するのに対して、本サービスでは集めた洗濯物を提携する各ランドリーに送り、洗濯・回収します。この仕組みによって、空いているランドリーの利用促進となり、店舗側にもメリットが生まれ、店舗からのマージン収入も予想されます。
集配はLINE APIでシステム構築し、精算もLINE Payでスマート化。将来的には洗濯機にセンサーを設置することで、稼働状況を把握し、洗濯効率を高める考えもあります。料金体系は夫婦二人の1週間分の洗濯物で、既存サービスが3,000円前後なのに対して、「次世代の洗濯代行業」では1,500円を想定。1時間3件分の洗濯を行うことで、1時間の売上が4,500円となり、各スタッフの人件費を差し引いても1,100円がチームに残る計算です。
データによればコインランドリーの利用経験者は欧米の20%に対して、日本は5%ほど。西埜氏の試算によれば、日本の家庭洗濯は4兆7千億円の潜在価値を持つ市場で、チームは“小さく始めて大きく育つ”を目標に、5年目に3,600万円以上の売上予想を立てています。
②多言語3Dデジタルコンテンツによる生きた歴史観光と文化財保護サービス
チーム名:KYOTO’S 3D STUDIO Inc.
登壇者:西村和也氏
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2016年の熊本地震で、自宅と事務所が被災した西村和也氏。同じく倒壊した重要文化財、阿蘇神社は設計図が無いことで復興できないという記事を目にした西村氏は、自身の持つ「3D技術が活かせるのでは」と考えました。さらに2019年に発生したフランス・ノートルダム大聖堂の火災の修繕において、一人の技術者が撮影していた3D点群データで再建可能となったことも、本サービス発案のきっかけとなっています。
西村氏の提案する「多言語3Dデジタルコンテンツによる生きた歴史観光と文化財保護サービス」には、『文化財保護に必要な自主財源の創出』と『訪日客の文化財観光の満足度向上』の狙いがあります。文化財保護の観点では、西村氏が所有する3Dの特許技術を駆使し、文化財や遺跡の3Dデータを計測。それらを3D点群データに変換し保管しておくことで、保護・修復・修理・調査などに役立てます。
一方で、3Dデータを元に文化財を楽しむ観光客向けのコンテンツも開発。3D動画などで通常は見ることのできない場所や角度から文化財を楽しめたり、AR技術で実際には存在しない昔の風景を映し出したり、3D映像で四季の風景を感じることができるコンテンツサービスを検討中。それらのコンテンツを多言語対応することで、訪日外国人観光客に対しても満足度の高いサービスになると、西村氏は話します。
また、これらのコンテンツを観光客向けに有料サービスとして提供することで、収益の一部を文化財の管理者へ還元し、文化財保護に要する自主財源の確保にもつながる仕組みです。コンテンツ使用料は1文化財あたり300円。試算では京都へ訪れる外国人観光客の年間人数約450万人のうち、1.5%の約6.75万人が利用することで、年間1,800~3,000万円の売上が見込まれます。
③二次元から三次元へ”空間認知・体験型教材の提案
チーム名:ホログラム株式会社
登壇者:山地直彰氏
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2020年のプログラミング教育必修化に備えて、ホログラム株式会社が行うのが「二次元から三次元へ”空間認知・体験型教材の提案」です。子どもたちにプログラミング教育を実施する上での課題は、〈継続するための仕掛け〉と〈新しい教材の作成〉にあり、それらを解決するためのキーワードが〈双方向で3D/三次元の学習〉にあると、山地氏は解説します。
そこでホログラム株式会社では、同社の持つMR技術を使い、新しい学習体験とプラスアルファの価値を提供。同社開発のMRデバイス『だんグラ®』を利用して、単なる実技ではなくロールプレイ(劇場型学習)を実現すると共に、利用者の数値データを取得することで、生徒一人ひとりの情報を分析して個性に合わせた指導システムも構築できます。
この指導システム構築の鍵となるのが、MRデバイスのコストとなります。現在サービス展開されているマイクロソフト社のホロレンズ2は1セット約40万円に対して、同社開発の『だんグラ®』は5,500円の低コストで提供可能です。お手持ちのiPhone端末と組み合わせることで、ホロレンズ2に匹敵する体験を得ることができます。また13歳未満でも安全に使用でき、なおかつ安価な『だんグラKids』(2,000円)を今春発売予定です。
想定ターゲットを12歳未満の子どもを持つ約790万世帯と位置づけ、スマホアプリの課金率や各イベントなどでの実績から、同社はだんグラ購買層を3~9万世帯に設定。これからの市場の成長度によっては30万世帯まで伸びることを予想しています。
同社では外部のコミュニティやブレーンとのつながりを重視して事業展開中です。今後の成長の推進力には『教育市場、産業向け受託開発、エンタメアプリ開発、万博需要』の4項目を挙げ、中でも教育市場においては他社との協業も含めて強化を図り、スピード感を持って取り組む。
④「KnewRon」~ITエンジニアの知識を整理し周りと共有を行う~
チーム名:株式会社ネクス・ソリューションズ
登壇者:田頭潤氏
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ITエンジニアの田頭氏は日頃からインターネットでの調べ物が多く、サイトのブックマークの管理方法に悩みを持っていました。そこで開発したのが、サイトのURLやファイル、SNSの情報などをまとめて整理することを目的とした「KnewRon(ニューロン)」です。
「KnewRon」は利用者が登録した情報を、自然言語処理や機械学習によって整理することで、他の人とも情報共有できるWEBサービスです。特徴のひとつは、手軽に利用できること。利用者がURLやファイルを登録するだけで、タグやタイトルが自動生成され、記事が同類の内容でまとめられたチャンネルに自動的に登録されます。
また、情報共有機能としてチャンネル内に他のユーザーが登録した記事を閲覧することも可能です。その他にも気に入ったユーザーが登録した記事を閲覧することも可能なので、自分が知り得なかった情報を知ることにもつながります。さらにチャンネル内の情報を条件指定によって絞り込むことができるほか、チャンネル同士を結合することで複数記事を一つにまとめることも可能です。「KnewRon」は、人と情報を共有することで、成長のきっかけや気づきを生み出すプラットフォームとしての役割を目指しています。
基本利用は無料サービスで展開し、マネタイズとしては「広告収入」「有料プラン」「グループプラン」3つの軸を想定。2020年は社内利用で製品精度を高め、2021年には正式ローンチを目指します。2022年にはグループプランをスタート予定です。2023年に現在の約170%アップで年間4000億円を超えると予想されているグループウェア市場に狙いを定めて、今後はビジネスを発展させていきます。
⑤安心・安全・安定を提供する -SAN衛生水供給システム-
チーム名:オリーブ技研・GPチーム
登壇者:新井泰雄氏
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オリーブ技研・GPチームは62歳の新井氏をはじめ、60~80代で構成されたシニアベンチャー企業です。同チームは、2018年に特許取得した「抗酸化カルシウムイオン水溶液」の技術を活かして、商品名「マイニック-S」を開発しました。「マイニック-S」は水道水に0.1%添加するだけで、残留塩素を無害化し、抗酸化水に変えることができる製品です。
その後、同チームは株式投資型のクラウンドファンディングで、5,750万円の資金調達に成功。さらに次世代の水を供給するミッションとして整水器の開発を決意し、「マイニック-S」の応用技術で「可溶性カルシウム水溶液」の開発に成功しました。
その後、同チームはクラウンドファンディング型の株式募集を実施し、5,750万円の資金調達に成功。さらに次世代の水を供給するミッションとして整水器の開発を決意し、「マイニック-S」の応用技術で「可溶性カルシウム水溶液」の開発に成功しました。
「マイニック-S」と「可溶性カルシウム水溶液」が揃ったことで、“水に添加するだけ”でアルカリイオン水や酸性水が製造できる整水器となります。それが『SAN衛生水供給システム』です。
『SAN衛生水供給システム』は、シンプルな装置で製作コストが安いメリットがあります。国内の畜産飼料やヘルスケア分野、世界の葉面散布肥料などを分野への進出を検討し、安心・安全・安定を提供するシニアベンチャー企業として新規上場を目指しています。
⑥ブルーベリーの完熟度判別アプリ
チーム名:OPCUスマート農業推進団体
登壇者:荒張秀樹氏
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実家が奈良県でブルーベリー農家を営む荒張秀樹氏。大阪府立大学大学院生でもある荒張氏は、米地氏と片岡氏を加えた3名でチーム「OPCUスマート農業推進団体」を創設。ブルーベリーの完熟度判別アプリを開発中。
アプリ開発のきっかけは、ご実家のブルーベリー農園で行っているブルーベリー収穫体験での気づきにあります。荒張氏は、収穫体験者から「ブルーベリーは思いの外、酸っぱい・渋い・味が薄い」という感想が多く受けました。その原因のほとんどは、収穫体験者の多くがまだ熟れていない『未熟果』を取っていることにあると話します。
未熟果と完熟果では糖度に約5~10%の差があり、美味しさも違います。ブルーベリー農家としては、お客様に酸っぱいブルーベリーを食べさせてしまい、これから熟す未熟果を取られてしまうというのが悩みでした。さらに、未熟果と完熟果の判別方法を、一般の収穫体験者に説明するのが難しいのも課題でした。
これらの課題を解決するための「ブルーベリーの完熟度判別アプリ」です。主な機能は、収穫体験者が画像で完熟果を見分けて覚えられる『収穫ドリル機能』やスマホのカメラをかざすことで完熟果を判別する『収穫判別機能』などを用意しています。
このソリューションを、収穫体験を提供するブルーベリー農家をターゲットに展開し、エンドユーザーとなる収穫体験者に利用してもらう考えです。同チームは農家と収穫体験者に同アプリを提供し、収穫体験者が農家へ支払う体験料の一部(1ユーザー300円)を貰い受ける形を想定しています。
荒張氏の試算では、ブルーベリーの収穫体験市場は年間約19.4億円となっており、2020年7~8月の夏の収穫期にデモを実施し、10~12月にアプリの完成を目指しています。
⑦植物育成をサポートするインドアグリーンプロダクト「Smart Terrarium」
チーム名:チームクロスワークス
登壇者:横江幸嗣氏
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植物をグラスの中で育成するテラリウムのメーカー、クロスワークス代表の横江幸嗣氏。横江氏は、緑に囲まれた生活を送りたいと願っている人が多い一方で、植物に適した環境を室内で再現することが意外にも難しいことに着目。植物の生態系をサポートして、長く育成・維持できるデバイスの開発をIoTで実現することを考えました。
室内で植物の生態系を維持する際の課題のほとんどは、「光不足・水やり不足・植物の環境状態がわからない」などです。これらの課題に対して、「LEDライト・自動化・環境センシング」などの技術を利用して解決するデバイスが、チームクロスワークスの開発した『Smart Terrarium』です。
『Smart Terrarium』には、次のような機能が備えられています。植物育成に適した波長で発光するフルスペクトル・グローLEDを搭載し、植物を光合成させることが可能。本体内部のタンクからミストを発生させ水分を自動的に供給。温度、湿度、土壌湿度センサー搭載することで、ネットワーク経由で常に育成環境をモニタリングでき、植物に適した環境を保つことができます。さらに、換気口の開閉とファンを駆動させることで換気制御も行えます。現在プロトタイプが完成し、さらに開発を進めている段階です。
チームクロスワークスは共に創り、お互いを生かし合う「共創共生」を理念に活動しており、この理念に共感し、共に新しい物を創りたいと考えるパートーナーを求めていると、横江氏は締めくくりました。