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2025年03月10日その他

【レポート】TEQS Generative AI QUEST

公益財団法人大阪産業局(ソフト産業プラザTEQS)では、先端技術を活用した新規事業開発を支援目的として、生成AIをテーマにしたアクセラレーションプログラム「TEQS Generative AI QUEST」を、2024年8月から11月までの期間で実施いたしました。

本プログラムは、座学講座とワークショップ、メンタリングで構成されており、生成AIへの理解を深めるとともに、生成AI分野の第一人者であるメンター講師の方々からのアドバイスなどを通じて製品・サービスのプロトタイプ構築を目指すものです。

募集に際しては定員を超える申し込みがあり、8組の企業・個人の方が本プログラムに参加されました。本レポートでは、プログラムの最終日(11/19)に実施されたデモデイにて、最優秀賞を受賞されたデイジーヘルステック株式会社 代表取締役の佐々木峻介氏の感想を交えて、「TEQS Generative AI QUEST」の参加メリットなどをお伝えいたします。

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―アクセラレーションプログラムに参加したきっかけを教えてください

TEQS Generative AI QUESTに参加した2024年8月頃は、個人事業主として活動していました。その当時はスタートアップ企業でPdM兼エンジニアとしてtoB向けの生成AI新規プロダクト作りを行う傍らで、自分自身のプロダクトも平行して制作していた状態です。その頃から自身のプロダクトとして「ダイエットアプリ」を制作していたのですが、上手くユーザに刺さっていない感じがあり、法人化するにはまだ自信が無かったというのが、その時の心境ですね。そんなタイミングで、この生成AIに特化したアクセラレーションプログラムを知り、「まさに今の自分に必要なプログラムだ!」と思って、応募させてもらいました。

―生成AIアシストのダイエットアプリ「デイジー」は、どのようなサービスですか?

まず基本的には他のアプリと変わらず、ダイエットや健康に困っている方に対して、日々の食生活や健康管理のサポートをするアプリです。ただ特徴的なのが、話すことを体験の中心としていること。そして、それ以外にもさまざまな点でAIを活用しているところです。

例えば、摂取した食事の登録はカメラ撮影のほか、パッケージや商品バーコードを撮影するだけでもAIが料理や商品を読み取ってカロリーや三大栄養素を算出してくれます。また、それらの摂取した食事内容に対して、AIトレーナーからチャット方式でのコメントが届くようにもなっています。このコメントの内容や会話の口調も、より人間らしくしているところもポイントです。例えば、オムライスの写真をすればAIトレーナーから「オムライス、美味しいよね。だけどカロリーが高めだからサラダも一緒に食べたほうがいいよ」みたいなアドバイスが届きます。それに対して、ユーザが「いやサラダを食べろって、どんなサラダがいいの?」みたいな返答をすれば、的確な回答を返してくれて、トークのやり取りが瞬時に続くようになっています。ユーザの返答は自身で入力することもできますが、返答例をAIが予測表示するので、より手軽にAIトレーナーとのやり取りが可能です。

―AIトレーナーがフランクな感じなのには、なにか意図があるのですか?

実は、私は理学療法士として働いていた時期があります。所謂リハビリの先生で医療従事者です。その時代は医療従事者という立場上、患者さんに対しては医学的に正しいことを正確にお伝えしていました。ただ患者さん側からすれば「先生はそういうけど、日常的には無理ですよ…」みたいなことは、よくある話だと思うんです。それらの経験を踏まえて、この「デイジー」では、よりユーザに寄り添ったコミュニケーションにしたいと思いました。痩せたいのにアイスを食べたことを咎めるのではなくて、「アイス、食べたくなるよね。なにか気分を変えたいことでもあった?」みたいな感じで、共感しながらユーザの状況を理解してアドバイスするような仕組みを生成AIで作るようにしています。

―TEQS Generative AI QUESTに参加して影響を受けたことはありますか?

TEQS Generative AI QUESTでは3ヶ月間のうちに、講義、ワークショップ、グループメンタリングが開催されました。これらに参加して影響を受けたことは、大きく3つあったと思います。

1つは序盤でメンター講師に言われた『ユーザの声をしっかりと聞く』ということです。とにかくユーザインタビューをして、さまざまな声を拾いまくることの重要性を認識しました。私たちの場合だと他のダイエットアプリの利用者にたくさん話しを聞きました。そこで気付いたのは他社アプリでは細かいデータが把握できる分、ユーザにも入力や登録の手間が多いこと。よくよく利用者に話を聞くと、そこまで細かいデータは求めていないという声があったので、「デイジー」では大体の操作が3タップで完了するように工夫しています。

2つ目はメンター講師の方々は生成AIの第一人者なので、『生成AIの使い方』という点が学びになりました。説明が難しいのですが、簡単に言うと、ダイエットの会話をするというだけであれば、どんなAIに投げても返っては来ますよね? ただプロダクトとしては単純に返答されるだけでなくユーザに良い体験をしてもらう回答にするは、工夫する点がいくつもあるんです。それらの細かい部分の工夫する点をワークショップやメンタリングを通して、知ることができました。この点はAIに特化したアクセラレーションプログラムだからこそ、感じられたところでしたね。

3つ目は『他の参加者の発表を聞けたこと』です。他社のお話なので、私から詳細はお伝えできませんが、プログラムを通じて他の参加者の発表を聞いて、メンター講師のフィードバックを一緒にヒアリングできたことは大きなメリットでした。厳密には当社と似たプロダクトは無かったので、技術や情報を共有することは無かったですが、逆に私たちが考えていない部分を注視している参加者もいらっしゃったので、そこから元々想定していなかった気づきや自社にも活かせそうなポイントが見つかったり、将来的に関連する課題が出てきた時の基本的な考え方を先に体験させてもらった感覚があります。

―サービスの現状と今後は、どのように考えていますか?

ダイエットアプリの「デイジー」としては、2023年からアプリストアでのダウンロードは可能でした。そこからなかなか日の目を見ない時期が続きましたが、TEQS Generative AI QUESTを終了した2024年12月以降に本格的なAI機能を充実させたことで、徐々にダウンロード数が伸びてくるようになっています。直近は、さらにユーザの皆さんに「デイジー」のファンになってもらうフェーズです。一般ユーザやモニターの方にもアンケートを行って、いかに「デイジー」を長い時間利用してもらえるアプリにするかに、日々取り組んでいる状況ですね。

また「デイジー」も今春の海外展開を視野に入れて進めていきたいと思っています。加えて将来的には、たくさんのユーザの声が集まるサービスとなる予定ですので、ダイエット商品やパーソナルトレーナー、ジム、オンライン指導などのダイエット関連サービスと紐づけるような展開も考えています。

―TEQS Generative AI QUESTを終えての感想を教えてください

アクセラレーションプログラムへの参加は2回目でした。初回は一般的な企業アクセラレーションだったのですが、今回は生成AIに特化したアクセラレーションでしたので、技術の使い方や生成AIでどのようなところに躓きやすいのかがわかり、とても有意義なプログラムだったと感じています。正直なところ、表面的な情報だけならネットや本からでも同じような情報は得られると思いますが、自分ひとりで考えていると「これでいいんだろうか?」と不安になることが多いんですね。

その点、アクセラレーションプログラムに参加すれば、実際に同じように新規事業を立ち上げようとしている人が横にいて、私たちの状況を踏まえてアドバイスをくれるメンター講師の方がいらっしゃるので、参考になっただけでなく、自分たちのやっていることに自信も持てるようになりました。

それに当社は、デモデイの発表で最優秀賞もいただきました。ある意味、大阪府や大阪市から認められた生成AIサービスということなので、この名誉は大いに活用させてもらいたいと思います。実際に大阪市とソフトバンクさんで運営されている「5G X LAB OSAKA」にはデイジーも展示してもらっているので、広報宣伝として今後活用していきたいですね。

これから「TEQS Generative AI QUEST」へ参加を検討されている方には、生成AIを使ってやりたいことが有る方はもちろんですが、その前段で「なにかやってみたいな」くらいの人でも参加されれば絶対に有意義なプログラムだと、お伝えしておきます。場合によっては人生の起点になるようなプログラムになるかもしれません。私自身も、このプログラム期間中に法人化することになりましたので、とても重要な3ヶ月間だったと思っています。

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取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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