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2019年03月20日実証実験

【実証実験インタビュー】視覚障がい者の歩行を案内する車輪付き杖装置の実証実験

 

実施主体
大阪市立大学

実証実験名
視覚障がい者の歩行を案内する車輪付き杖装置の実証実験

2019年1月16日(水)・17日(木)の2日間、大阪市立大学の今津篤志講師による「視覚障がい者の歩行を案内する車輪付き杖装置の実証実験」が、ATC O’s棟北館・南館2階共用部からITM棟2階共用部を使用して行われました。

 

#「車輪付き杖装置」とは、どのようなものですか?

「車輪付き杖装置」は、杖の先端に車輪、センサ、コンピュータを付けて構成された装置です。利用者は、先端の車輪を接地させたまま、杖を介して装置を押して歩行します。その際に、あらかじめ設定された地図情報に従って、装置が車輪の操舵を行い、歩行者を目的地へと案内するものです。

 

#2018年に行った実証実験と、今回の違いは、どのようなところでしょうか?

2018年は「杖車輪型歩行者案内装置の性能確認」として、目の見える方にご協力いただき、実証実験を行いました。2019年の今回は、本来の目的でもある視覚障がい者の歩行案内の精度検証を目的とし、実際に視覚障がい者の方々に被験者を務めていただきました。
それに伴う装置の改良点としては、高精度センサを搭載するなど、各部分の性能を向上させると共に、一番大きな変更点として『ブレーキ機能』を追加しました。前回は障害物にぶつかりそうな場合は、利用者が目で見て止まればよかったのですが、今回は装置のセンサで障害物を判定し、ブレーキが作動する仕組みにしました。ただし、ブレーキも完全に車体を停めてしまうものではなく、障害物を検知した際に車輪を押すのが重くなり、障害物の存在を利用者に伝えることで、利用者自らが静止することを促すためのものです。


実証実験には谷口直生さん(工学部4回生)の他、7名の学生も参加した

 

#今回の実証実験の概要を教えてください

今回はATCのO’s棟北館・南館2階 共用部からITM棟2階共用部までの片道400mコースで、視覚障がい者の方14名に被験者としてご協力いただきました。被験者のうち10名の方は2018年の夏に実施した室内での予備実験で1度装置に触れてもらっていたのですが、残りの4名の方に関しては今回が装置に触れる初めての機会となっています。まず今回の実証実験にあたって気をつけたことは、何よりも事故なく安全に実験を終えることで、それは問題なく達成できて良かったと思っています。その上で、目の見える方と見えない方との歩行の違いについても知ることができた点も大きな収穫でした。

 

#実証実験を終えてみての感想はいかがですか?

今回の実証実験では、設定したルートを完走された方もいましたし、途中で止まってしまう方もいらっしゃいました。途中で止まった方の主な原因は、装置がルートから僅かながらでも外れた場合に、本来のルートでは無いはずの壁や障害物を検知してしまい、止まってしまうケースです。これに関しては装置の改善も必要ですが、利用者の操作における熟練度も大きく関係してくると感じています。
新たに追加したブレーキ機能については、まわりの人が正面から近づいて来た場合や横切った場合などで、機能の作動が想定よりも遅れて、人が近づきすぎてしまうことがありました。また利用者が他の人に追い越された場合などの、止まる必要のない状況でもブレーキが作動する場面があったので、それらは改善点として捉えています。ブレーキ機能は、今回の実証実験で一定の成果を得たとは思いますが、まだまだ改良の余地があると考えています。

 

#今後の展開を教えてください

今後は、装置自体が周辺状況を把握するためのカメラ機能の追加を検討しており、すでに試作に入っています。目標としては、2019年度中にカメラ機能付きの装置を完成し、2020年初頭に実証実験が行えればと考えています。また、今後は屋外での実証実験も想定しており、防水機能も検討中です。「AIDORエクスペリメンテーション」でも舞洲エリアを使用した実証実験が可能になると聞いていますので、それも実現できればと考えています。さらに装置が視覚障がい者にとって使いやすいというだけでなく、周囲の歩行者の方にとっても受け入れやすいものでなければいけませんので、柔らかな曲線を使った外装パーツを白石晃一氏(ファブラボ北加賀屋・京都造形芸術大学)/秋山慶太氏(ふしぎデザイン)にデザインしていただきました。残念ながら今回の実証実験には間に合いませんでしたが、次回の実験に参加させていただけたら、そのときに使いたいと考えています。

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