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2023年08月11日実証実験

【イベントレポート】アバターまつり2023 レポート

2023年7月11日(火)~20日(木)の期間、大阪・咲洲の複合商業施設ATC(アジア太平洋トレードセンター)において、アバター100実証実験『アバターまつり』が開催されました。

『アバターまつり』は、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)などで構成されたムーンショット型研究開発事業 目標1「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」研究開発プロジェクト(以下:アバター共生社会プロジェクト)による社会実験イベントです。本イベントの共催である咲洲プレ万博実行委員会に参加する公益財団法人大阪産業局(ソフト産業プラザTEQS)は、実証実験支援プログラムにおいて、本イベントを支援いたしました。

~概要と目的~

『アバターまつり』はATC(アジア太平洋トレードセンター)のITM棟/O’s棟のさまざまなエリアに合計100体のサイバネティックス・アバター(略称:CA/遠隔操作できるロボットアバターやCGアバター)が設置される社会実験イベントです。ATC内の各所において、来場者への施設・店舗・イベント等の案内をサイバネティックス・アバターが行います。これらのCAによる案内には、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)が新たに開発したCA遠隔操作システムが用いられ、1人操作者によって複数体のCAが遠隔操作されました。操作者はATC内に設置された複数の操作室から人が遠隔操作するほか、ATC外の遠方の施設からも遠隔操作を行う実験を実施しています。

また、本イベントはCA100体を遠隔操作する技術的な実証実験を行うと共に、「CAを利用して働く・暮らす」という、アバター共生社会プロジェクトが目指す未来社会を、一般の方に疑似体験してもらい、意見を収集することで、社会的受容性の調査と研究開発へフィードバックすることも狙いです。一般来場者にもいくつかのCAを実際に遠隔操作して、会話や施設案内を体験してもらいました。

~主なCA紹介~

「CGエージェント」/ATR、名古屋工業大学
会場内に約60台設置されたTVモニターに映し出されていたのが「Gene(ジェネ)」と「Uka(ウカ)」のCGアバター。モニターに向かって直接話しかけることで、ショップや展示物の案内を言葉で説明します。バックヤードでは操作者1人が複数(最大3体)のCAを操作することで、少ない人員で施設全体の案内をカバーする実証実験を実施。また、一般来場者が操作体験できるブースも設置され、お子様連れのファミリー層を中心に多くの人が可愛らしく動くCAの操作体験を楽しんでいました。

「移動型ロボット Teleco」/ATR、大阪大学
障害物を避けながら、人が歩く速度に合わせて動く移動型ロボット。車輪にはダイレクトドライブ機構を使用し、静音性が求められる施設にも対応できるように、非常に静かに移動します。頭部のマイクを通じて、コミュニケーションが可能。アバターまつりでは連続する接客業務の分業として、Telecoが対話を行いながら、「自律対話型ロボット CommU」の位置まで案内して接客を引き継ぐ実証実験を実施しました。

「小型ロボット Sota」/大阪大学、京都大学、株式会社サイバーエージェント
ITM棟2Fセントラルアトリウムにズラリと並べられた「小型ロボット Sota」が来場者の注目を集めていました。来場者による操作体験ブースとなっており、1人の操作者が1体、3体、5体…と徐々に操作するSotaの数が増え、それぞれの動きがシンクロしていく不思議な光景に多くの来場者が興味を示していました。

「アンドロイド ERICA」/ATR、大阪大学、理化学研究所
限りなく人に近い外観を持ち、身振り・手振り・視線などの多彩な手段でコミュニケーションを行うことができるロボット。アバターまつりのエントランスであるウェルカムゾーンに設置されて、その精巧な造りに多くの来場者が目を見張っていました。また、このERICAでも遠隔操作体験を実施しています。

~アバター共生社会プロジェクトの今後について~

アバター共生社会プロジェクトでは2050年を目標として、2つのゴール設定を行っています。一つは、高齢者や障がい者を含む誰もが複数のCAを用いて身体・認知・知覚能力を拡張しながら、常人を超えた能力でさまざまな活動に参加できる社会形成。そして、もう一つが誰もがいつでもどこでも仕事や学習ができ、通勤通学に縛られない自由な時間が十分に取ることができる社会づくりです。

また、その過程において2025年の大阪・関西万博では、アバター共生社会プロジェクトのプロジェクトマネージャーである大阪大学の石黒浩先生が、大阪・関西万博のプロデューサーの1人であることから、2025年の本番でも関連パビリオンで長期的な実証実験を実施する予定であることが発表されています。今回の『アバターまつり』は万博での実証実験を見据えたプレイベントとしての位置づけもあり、さまざまなCAを広く一般来場者にも体験してフィードバックをもらい改良を進めることで、大阪・関西万博ではアバター共生社会が目指すさらなる未来の社会像を体験できると考えられます。

取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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