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2013年11月22日聴講セミナー

日本アニメ・番組・映画のアメリカ市場へのローカライゼーション事例紹介セミナー

Bang Zoom Entertainment! のCEOであるエリック・P・シャーマン氏と
インターナショナル事業開発スタッフ 工藤あずさ氏によるセミナー
「日本アニメ・番組・映画のアメリカ市場へのローカライゼーション事例紹介」
講演内容をダイジェストでレポートします。
セミナーは、シャーマン氏が英語で話した内容を、工藤氏が日本語に翻訳する
スタイルで進行しました。

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■ローカライゼーションの考え方
シャーマン氏のローカライゼーションに対する考え方は「ローカライゼーションは新たに脚色することと同じ意味であり、ある国の文化に合わせて作った作品を別の文化にあわせて脚色し直すことだと考えている。一般的なローカライゼーション方法は、字幕、吹き替え、映像そのものの再編集、の3つの手法がある」とのお話でした。
 
ただ各手法には、それぞれ一長一短があるとのこと。
「字幕」→読むことと聴くこと、脳へのアクセスプロセスが異なるために違和感を感じがち
「吹き替え」→不適切や上手じゃない吹き替えは作品の価値を落としてしまう
「映像の再編集」→作者の意図が伝わらないリスクが高まる
 
■ローカライゼーションのポイント
次に、シャーマン氏はローカライゼーションを成功させる方法を紹介しました。
 
★素晴らしいローカライゼーションを行うための3つの秘策
1.聴く
これが最も大切で、オリジナル作品に耳を傾け、日本のアニメであれば、日本語を何度も聞くことで微妙なニュアンスを把握する。
 
2.作品を理解する
オリジナル作品が生まれた背景、何を伝えたいのかをきちんと理解することが大切。時には、伝えたいことが明確じゃない作品もあり、そういった作品はローカライゼーションも大変。
 
3.ターゲットとなる視聴者を理解する
ローカライゼーションして提供する視聴者は、文化や考え方も異なる。ターゲットを正しく意識することは、ローカライゼーションを成功させる上で非常に重要。
 
シャーマン氏は何度か「ローカライゼーションのプロセスは、常に『選択の連続』だ」と説明しました。
何もかもオリジナルと同じであることを譲らずにいると現場は停滞してしまい、結果的に作品全体の流れも悪くなる。作業の流れと作品の流れは連動している。そのため、一つひとつのセリフに対する翻訳の忠実さに気を配りつつも、作品全体の流れを止めないことを意識して翻訳を進めている、と。
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■吹き替えにおける重要な要素について
次に吹き替えにおける重要度が高い項目についての説明に移りました。
 
1位)吹き替え声優の演技力
2位)セリフの内容
3位)正しい翻訳
4位)セリフと口のシンクロ
 
シャーマン氏の個人的な主観や経験として「口とセリフのシンクロ具合で評価の善し悪しを指摘されたことはなく、代わりに声優の演技力で評価が左右された経験は多々あります。こうした経験から前記のような重要度順になっています。」と説明。
 
■吹き替え作業の進行方法
次に吹き替え作業の進行方法についての説明に移りました。
 
シャーマン氏によると、日本語から英語へのローカライゼーションは、1)日本語のスクリプトを英語に翻訳し、2)翻訳をもとに、ライターが英語のスクリプトに書き直す、という流れで進みます。特に重要なのは2の工程。作品が伝えたいこと、口パクの時間、翻訳者や監督の要求事項やリクエストも反映して行われています。最も難しいのは、英語には存在しない単語やことわざとのこと。
 
次に、実際にローカライゼーションしたアニメ映像を使って日本語版と英語版を見比べながら、アメリカのテレビ番組の規制の厳しさや翻訳による変化について、具体的な説明を行いました。
 
■質疑応答
最後に参加者からの質疑応答を行いました。
 
Q)シャーマン氏の日本文化や日本人の感情を理解する能力はどこで培ったのですか?
A)一年間の日本滞在で異文化に触れた経験が、私に大きな影響を与えました。アメリカ人である自分とは何者なのか?について考える機会が与えられました。それはとても幸運なことだと思っています。
 
Q)シャーマン氏以外のスタッフは、日本文化を理解していますか?
A)当社では全スタッフを何年もかけてトレーニングしており、現在は約1/3のスタッフが日英バイリンガルです。すべてのプロセスで、日本文化や日本語が分かるスタッフが監督、判断しており、私がいなくても正しい判断ができる体制を整えています。
 
Q)北米で人気が出る日本のアニメ作品の魅力とは何でしょうか?
A)アニメだけ、日本の作品だけに限られたことではありませんが、ストーリーが魅力的な作品は、言葉や国境を越えても魅力的です。日本のアニメが人気なのは、ストーリーが面白いからだと思います。
 
Q)ローカライゼーションする際は、コミックなどの出版物を事前調査したりした上で取り組まれるのですか?
A)ケース・バイ・ケースです。多くの場合は、日本のアニメを北米に持ってくるライセンサーが、当社に指示します。例えば、アニメだけを見てローカライズするか、コミックや関連書籍、メディアなどを事前にチェックしてからするか、といった具合です。
 

最後は予定時間を少し越えてまで、
シャーマン氏は丁寧に質問に回答してくださり終了しました。
その後、シャーマン氏を囲んでの懇親会を開催。
ここでもシャーマン氏と参加者、さらには参加者同士でも活発な議論が行われ、
非常に盛り上がりを見せた懇親会となりました。
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