【レポート】2021年度 5Gビジネス開発補助金デモデイ
【5Gビジネス開発補助金成果発表会】
第5世代移動通信システム(5G)は、様々な産業においてイノベーションを生み出すことが期待されています。そこで、市場拡大が見込まれる5Gを活用した新製品・新サービスの開発を後押しする目的として、開発費用の一部を補助する「5Gビジネス開発補助金」事業が実施されました。
去る令和4年3月25日(金)に開催された『5Gビジネス開発補助金成果発表会』では、令和3年度の補助事業に採択された5つの企業が、補助金事業における成果を報告。新製品・新サービスの紹介を行うとともに、協業/資金調達パートナーの発掘や販路拡大を目指したピッチが行われました。
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TEQS内のリアル会場とオンラインのハイブリッド開催となった『5Gビジネス開発補助金成果発表会』の冒頭は開会の挨拶に始まり、大阪市・ソフトバンク株式会社・公益財団法人 大阪産業局・一般社団法人i-RooBO Network Forumで共同運営している『5G X LAB OSAKA』の紹介が行われました。それに引き続き、株式会社フロンティアワンの代表取締役である鍋野敬一郎氏から、5Gにおける現状と課題、BEYOND 5G、6Gまでを見据えた、基調講演「5Gの現状と課題、Beyond5G/6Gへの取り組み」が開催されました。
鍋野氏は現状の課題として挙げられる普及率について、2021年現在で5Gの全世界普及率は5%程度で、2025年を目処に20%以上に成長するとの見解を話されました。また、5Gの「大容量」「低遅延」「多数同時接続」という特性から、人間同士の通信よりも、機械同士やセンサー同士の通信において優位性が大きく、産業用での活用が今後も大いに伸びるとの話で、産業活用の側面では、国内ですでに100社以上のベンダーがローカル5G免許を取得しており、国内有数のロボット企業や大手製鉄会社における運用事例についても、ご紹介がありました。加えて5Gのさらに先となるBEYOND 5Gや6Gについても解説があり、6Gにおいては「低消費電力」「高セキュリティ」「自律性」「拡張性」の特徴がさらに付加されるとの話で、参加者の興味を集めていました。
基調講演に続いて実施されたのが、今回の補助金事業対象者によるピッチです。5つの企業(グループ)が、各10分の持ち時間で、新製品・新サービスの紹介を行いました。
◆susuROBO株式会社
高齢者DX(高齢者向け音声アシスタントサービス)
susuROBO株式会社は、外国人起業活動促進事業を活用して大阪で起業したマカチョフ・マキシム氏がCEOを務めるシステム開発会社です。同社が開発したのが、SNSを有効活用できていない高齢者を対象とした、使いやすく親しみやすい5Gを活用したランプ型のスマートデバイスです。同社の「lively.ai」という音声対話開発プラットフォームを活用することで、ノーコードエディタでの開発を実現し、デモ機となるランプ型のスマートデバイスも制作しました。実践デモでは、コミュニケーションアプリを使用した音声でのメッセージのやり取りを実施。加えて、4Gと5Gによる通信環境における利用状況の違いについて検証した結果のレポートと、今後のビジネスプランやスケジュールについての説明を行い、発表を終えています。
◆株式会社ツバサ建業
工事現場に安心を ー安全帯のIoT化で建築業DXを加速ー
建設業務に携わる株式会社ツバサ建業が着目したのが、現場作業員における安全を確保するための仕組みです。工事現場業務においては、事故の発生率が高く、人員の確保が困難で、予定変更などによる人員配置の難しさなどが、課題としてあります。また安全面を確保する観点から、工事現場をIoT化することで課題解決を目指しました。同社は、今回の補助事業を通じて『工事作業員マネジメントシステム』を開発。工具にセンサーを取り付けることで、「正しく着用されているか?」「どの位置(高さ)で作業しているのか?」などを、管理者などが把握できるシステムを構築しました。サーバーへのデータアクセスに5Gを活用することで、数千人単位の大規模な工事現場にも対応可能ということです。
◆株式会社Bizibl Technologies
オンラインセミナー・プラットフォーム『Bizibl(ビジブル)』
登壇者である花谷燿平氏が大学院在学中に起業した「株式会社Bizibl Technologies」。同社では今回の補助金対象事業として、セミナーの告知ページ作成からプレゼン、個別面談、参加者管理、KPI分析をシームレスに実行する、オンラインセミナー開催プラットフォーム『Bizibl(ビジブル)』の開発・提供を行いました。同サービスは、オンラインセミナーの課題である「商談につながりにくい」「集客できない」「工数がかかる」という課題を解決するもので、現在リリースしているβ版を5社が有料導入、十数社が試験導入している実績を持っています。5G活用のメリットについては、オンラインセミナーにおける画面共有の遅延計測や動画ダウンロード速度を、同社が独自調査したレポート結果を報告。まとめとして、今後の事業化への見通しや、5G普及による同事業への影響についての説明が行われました。
◆株式会社フツパー
5G通信を活用した4K映像のリアルタイム配信サービス
製造業向けの画像認識エッジAIサービスに強みを持つ「株式会社フツパー」。同社は、昨今の製造業を取り巻く環境の変化に対応して、製造現場の省人化、リモート化、スマート化を目指した5Gによる4K映像のリアルタイム配信サービスを、今回の補助金対象事業で開発しました。システムの概略は、工場内に設置した4Kカメラの映像を5Gで転送し、どこからでも高画質で監視できるというものです。また映像配信だけでなく、同社のAI技術で人の流動性を確認することや、外部ストレージに映像保存する仕組みを入れることで、事故時などにデータの二次活用も可能。モバイル4Kカメラを利用すれば作業者の手元も鮮明に見られ、研修や保全でも活用でき、管理者・責任者が直接工場へ行く必要がなくなります。5Gの利用検証では、4Gとの画像遅延速度の検証や、高速環境下の4Gと低速環境下での5Gとを比較した、興味深い検証結果などについても、実験報告が行われました。
◆株式会社Mountain Gorilla
5G通信で実現する仮想現実デバイスの実用化
製造業の帳票を電子化するサービス『カカナイ』など、製造現場向けのDXやIoTの企画開発を手掛けている「株式会社Mountain Gorilla」。同社は、タブレット端末の入力情報をクラウド保存・管理するサービスである『カカナイ』を、5G活用することでヘッドマウントデバイスを使用した『XRカカナイ』として新サービスを開発しました。これまでのヘッドマウントデバイスの利用時の課題は、処理能力(CPUへの高負荷)、操作の難しさ、高コストです。同社は、この課題を5G通信で克服。情報処理をクラウド上で行いデバイスでの処理を最小限に抑え、カメラ映像やセンサーを活用することで難しいハンドトラッキング操作を減らし、WEBアプリ化することで廉価版のヘッドマウントデバイスでも対応できるようにしました。
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最後に今回のデモデイでは、各登壇者のピッチ終了後、令和4年度の5Gビジネス開発補助金募集に関する情報が公開されました。
対象事業は「5Gを活用する新しい製品・サービスの開発を行う事業であること」「先端テクノロジービジネスの実用化に向けた、試作品の製作及び実証データの取得等を行う事業であること」となっており、令和4年4月から募集がスタートする予定です。5Gに関連したビジネスプランやアイデアをお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)