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2023年08月22日実証実験

【実証実験インタビュー】電動キックボードのシェアサービス利用に関する実証実験

実施主体
Beam Mobility Japan株式会社

実証実験内容
電動キックボードのシェアサービス利用に関する実証実験

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2022年12月から2023年6月にかけて、Beam Mobility Japan株式会社による「電動キックボードのシェアサービス利用に関する実証実験」が大阪咲洲エリア内で実施されています。今回はBeam Mobility Japan株式会社のジャパンビジネスディベロップメント マネージャーである元吉明彦氏に実証実験の概要や目的についてお聞きしました。

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○Beam Mobility Japan株式会社の事業内容について教えてください

私たちのグループの本体となるBeam Mobilityは、本社拠点をシンガポールに置き、現在はアジア・太平洋地域の9カ国で電動キックボードのシェアサービスビジネス事業などを展開している会社です。電動キックボードに対して先進的なオーストラリアや韓国などでは、本格的にビジネスがスタートしており、すでに多くのユーザーにご利用いただいています。そんな中でBeam Mobility Japan株式会社は、日本での事業展開を目的に2021年に設立。日本国内で電動キックボード市場が活性化し始めた2022年より本格的に事業をスタートしました。他国では電動自転車のシェアサービスも展開していますが、日本国内では電動キックボードのシェアサービス事業のみを展開予定です。しかし、世界の環境問題に配慮することも当社のビジネスコアでもあるので、シェアサービスで利用された旧世代の電動キックボードをリサイクルして販売する事業も行う可能性はございます。

○今回の実証実験の概要について、ご説明ください。

まず今回の電動キックボードの実証実験は、経済産業省の新事業特例制度の認定を受けて、実施しております。Beam Mobility Japan株式会社では「大阪」「新潟」「沖縄」にて実証実験を行っており、大阪府では梅田や新大阪などの10数か所にポートを設置して、電動キックボードの都市型利用についての調査を実施中です。一方で新潟県は南魚沼市、沖縄県は那覇市でポートを配置して、主に観光地での利用スタイルなどの調査を実施しています。

今回の実証実験である大阪咲洲エリアでは、ニュートラムのトレードセンター前駅付近(ATC)とコスモスクエア駅前(森ノ宮医療大学付近)の2箇所にポートを設置。近辺で働く方々のビジネス利用や、週末・行楽日に訪れる観光客利用のラストワンマイルをサポートすることを想定して、実証実験を行っております。

○スケジュール、利用方法、検証内容は、どのようなものですか?

ポート設置が完了して、実証実験がスタートしたのが2022年12月上旬です。まず2022年の年末までは、実証実験関係者のみのテスト利用として開始しました。運用面や安全面での課題をチャックした後、2023年1月からは一般利用を開放。2023年3月現在も実証実験中で、2023年6月頃まで実施予定となっています。

利用者には、まずスマホでアプリをダウンロードしてもらいます。初回登録時のみ運転免許証、支払い設定(クレジットカード番号の入力)、選択方式の安全講習クイズへの回答が必要で、正解でき次第、利用が可能です。利用可能となったらアプリにて、電動キックボードの電子ロックを解除して利用開始。利用後は所定のポートに返却し、返却後の電動キックボードを画像撮影して、アプリ経由でアップロードすることで利用完了となります。

検証内容としては、各電動キックボードにおける「利用回数」「走行距離」「走行時間」などで、これらはすべてクラウド管理されて情報収集しています。また「利用料金」については、ロック解除時に50円、その後1分あたり15円が加算される料金設定とすることで、適切な金額であるかを今後検証する予定です。

○現状での実証実験の成果を、どのようにみていますか?

電動キックボードの利用は天候に左右される部分も多く、冬の時期は利用が減る傾向にあります。その上で、この大阪咲洲エリアでは2箇所のポート設置であることを踏まえると、ある程度想定通りの利用実績です。また、電動キックボードの実証実験でありがちな話ですが、ポートの設置箇所がA地点・B地点の2箇所または多くてC地点も含めた3箇所ということがあります。私たち事業者としては、それらのポート間の移動利用を基本的に想定するのですが、実際の利用者はその間だけを利用したい訳ではありません。利用者の方々が日常的に行くエリアや行きたいエリアを見極めて、放射線状に利用エリアが広がるようにポートを設置する必要があると考えています。

○御社のシェアサービスにおいて、他のサービスとの違いや優位性はどのようなものですか?

まず安全性には配慮しています。日本に投入される電動キックボードは、すべて安全性の高いハイスペックな車体であることはもちろんですが、IoT管理でシステム側からも安全性を高めることが可能です。例えば、大阪市内で走行している車体のすべてまたは一部だけに速度制限を掛けることも可能ですし、交通状況やイベントなどに応じて、該当エリアに侵入した車体にだけ制限を掛けることもできます。このようにシステム面からも、安全に利用してもらえることを考えたビジネスモデルとなっています。

また、ローカルビジネスとのつなげることも、当社のコアバリューとなっています。ポートの設置場所で多く利用させていただくのが宿泊施設や飲食店舗の前となるのですが、一般的には単なる場所貸しとなりがちです。しかし、当社のシェアサービスでは電動キックボードの返却時に、その状況を画像撮影してアップロードしてもらうことで、返却場所に応じた店舗情報や割引サービスなどを利用者のスマホへ送信して、施設への誘導を促す仕組みを取り入れています。

○今後の展開について、教えてください。

日本では、諸外国とはまた違った独自の電動キックボード文化が形成されるでしょう。そうした動きの中で、各都道府県の自治体さんが電動キックボードの活用について真剣に考え始めているので、私たちとしては、それら自治体の持つ課題を電動キックボードで解決するお手伝いができればと思っています。駅前や公民館、図書館などにポートが設置され、人々の日常の移動手段として利用されることになれば、本当にその街に電動キックボードの文化が受け入れられることになると思います。私たちBeam Mobility Japanは、都市の大小に限らず、日本全国いろいろな場所に可能性があると感じていますので、ぜひとも、それらの地域におけるモビリティの課題解決に役立ちたいですね。

取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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