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2023年05月09日実証実験

【実証実験インタビュー】小型スキャニング型ドップラー・ライダーを用いた3次元風況観測

実施主体
メトロウェザー株式会社

実証実験内容
小型スキャニング型ドップラー・ライダーを用いた3次元風況観測

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2023年4月17日(月)からメトロウェザー株式会社による実証実験「小型スキャニング型ドップラー・ライダーを用いた3次元風況観測」がアジアトレードセンター(ATC)にてスタートしました。今回はメトロウェザー株式会社が4月27日(木)に実施したメディア向け説明会の内容をお伝えいたします。

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■メトロウェザー株式会社と技術について

私たちメトロウェザー株式会社は2015年に設立した、京都大学発のスタートアップ企業です。風況観測、予測シミュレーションを行うためのドップラー・ライダーの小型化低廉化を実現することで、今後将来に予想される“空飛ぶクルマ”やドローンの安全飛行、アンチドローン対策、風力発電の風車立地選定、鉄道などへの突風対策で活用されるサービスの提供を目指しています。

ドップラー・ライダーとは、屋外にて人体に無害な赤外線レーザーを照射し、空気中を風に乗って漂っている塵からの反射光を受け取り、ドップラー効果で僅かに変化した光を検知する機械です。レーザー光は空気中を直進し、ほとんど反射しませんが、受信できた微弱な光を解析する事で、風向きや風速を3次元観測することが可能となります。ドップラー・ライダー自体は1990年代にアメリカで開発されたもので、設備投資に数億円が必要な高価な機械でした。その機械の性能を落とさずに価格を1/10程度に抑えてイノベーション開発したのが、メトロウェザーのドップラー・ライダーです。また当社のドップラー・ライダーの特徴は低価格だけでなく、従来品より小型化され設置場所を選ばなくなった事と、機械自体が自転することでレーザー光を全方位へ照射でき、照射距離も半径10~15km圏内の広範囲で測定ができることにあります。

当社の技術は世界的にも高い評価を受けており、2016年にアメリカ国防総省からの研究助成金を受領したほか、NEDOのベンチャー支援事業にも採択していただきました。近年の2021年にはアメリカNASAの「都市の気象センシングインフラ」に係るSBIRプロジェクトにも参加しております。

■実証実験「小型スキャニング型ドップラー・ライダーを用いた3次元風況計測」について

今回の実証実験では2023年4月17日(月)より、大阪・関西万博の会場である夢洲に隣接する咲洲にあるアジアトレードセンター「ATC」の屋上に、当社が開発した「小型スキャニング型ドップラー・ライダー」を設置し、大阪・関西万博会場を含む大阪湾岸エリア一帯の風況データを収集することで、風向きや風速を数値化・可視化していきます。また、万博開催までの長期間に渡ってデータ収集を行うことで、対象エリアの四季や月毎に風況特性などについて検証することも、本実験の目的です。

大阪・関西万博では、ドローンや空飛ぶクルマなどの空中を移動するモビリティが数多く活用されることが予想されます。それらを安全で安定的に飛行させるには、会場上空や周辺の風況情報は必要不可欠です。弊社は万博会場上空をリアルタイムにモニタリングすることで、風況計測の立場から大阪・関西万博をサポートしたいと考えております。
また、弊社のドップラー・ライダーは空気中の塵による微弱な反射波だけでなく、他の対象物における反射波もすべて受信しております。逆にいえば、不審な飛行物体やドローンを検知することも可能で、セキュリティ分野においても役立てると考えております。

現段階では、本実証実験でATCに設置した機器が1台目となりますが、大阪・関西万博の会場にも設置いただけるよう交渉中です。さらに、大阪・梅田エリア、弁天町エリア、阿倍野エリアでも設置交渉を行っており、これらのエリアを網羅することできれば、世界で初めて「大阪」が上空の風況環境をリアルタイムで可視化できる都市となります。

■NASA「都市の気象センシングインフラ」SBIRプロジェクトについて

アメリカのNASAとは2020年頃よりコンタクトがあり、本実証実験と同様の実験を実施しています。こちらの実験も2023年に本格的にスタートし、バージニア州ハンプトンにあるNASAのラングレー研究所のドローンテストフィールドの風況計測を弊社が担当しております。弊社がデータ収集した風況情報をもとに、ドローンのテスト飛行を行うことで、風とドローンの関係性について調査するという実験です。

弊社の当該技術については、その重要性をアメリカはいち早く察知・認識しており、当初から海軍研究による基礎研究予算の捻出やSBIRプロジェクトへの参画、総領事の弊社訪問などのアプローチをいただいております。

■今後の展開について

今回の実証実験で収集したデータやリアルタイムにモニタリングした情報をもとに、大阪・関西万博で飛行する空飛ぶクルマや運行管理者への風況情報・突風アラート情報サービスの提供を目指しています。また湾岸地域に加えて、風の通り道となりやすい河川地域での活用も視野に入れることで、サービスの拡大を考えております。さらに、今回大阪で実施する仕組みをモデルケースとして、全国各地への横展開をしていくことで、幅広い地域や分野で活用していただくことを目標としています。

取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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