【実証実験インタビュー】自動搬送ロボットを用いた屋内/屋外環境での移動制御および自己位置推定に関する検証
実証実験名
「自動搬送ロボットを用いた屋内/屋外環境での移動制御および自己位置推定に関する検証」の実証実験
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2022年7月25日(月)から同年9月27日(火)にかけて、株式会社ディジタルメディアプロフェッショナルによる実証実験「自動搬送ロボットを用いた屋内/屋外環境での移動制御および自己位置推定に関する検証」が、大阪咲洲の商業施設「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」内で実施されました。今回は同社の取締役サイバーAIディビジョンGMであるシュミット・ベンジャミン氏と、プロジェクトの管理責任者でありマネージャーの桑原良彦氏に実証実験の概要や目的について、お聞きしています。
#まず『株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル』が、どのような会社であるか教えてください
シュミット氏
「私たち、株式会社ディジタルメディアプロフェッショナルは東京に本社を置く、GPU(グラフィックス プロセッシング ユニット)の開発に強みを持っている会社です。国内大手ゲーム会社のハードウェアに当社のGPUが採用されたことが大きな実績となり、その後エンタメ分野やカメラ・プリンターなどの画像分野でも、幅広く利用されることになりました。また、10年ほど前から事業領域を広げる意味で、コンピュータグラフィックスやAI分野などにも積極的に取り組んでおり、今回の自動運転技術についても、先を見据えた新しいプロダクトの一環として実施しております」
#今回の実証実験の目的について、教えてください。
桑原氏
「当社開発の自動・自律運転向け統合ソフトウェア『ZIA MOVE(ジアムーブ)』を組み込んだ車両ロボットで自動走行実験を実施し、自己位置推定や自動走行の精度や動作検証を行っています。『ZIA MOVE』は認知・自己位置推定から判断・制御までの自律運転に必要な機能を備えたソフトウェアパッケージで、すでに製品化済です。位置情報を取得するセンシングはLiDARやGPSにも対応していますが、お客様から「より低コストの汎用カメラを使用したヴィジュアルスラムでも高精度に利用できないか?」という要望があり、今回の実証実験を行うきっかけとなりました。そこで実証実験では、自己位置推定や経路生成を行う上で、よりヴィジュアルスラムに適したアルゴリズムに変更したもので検証を行っています」
#実証実験の概要と進行度は、どのようなものですか? ※取材時は実証実験期間中
桑原氏
「現在はATCの2階アトリウムと6階オフィスフロアを中心に、自己位置推定実験と自動走行実験を繰り返しています。開始当初はヴィジュアルスラムによる自己位置推定の精度が出なくて苦労しました。オフィスや限られたスペース内では問題なかったのですが、ATCの2階アトリウムなどの広い空間では上手く自己位置を推定することが出来ず、プログラムを修正したり、機能を追加したり、改善を図るところからスタートしました。実験開始から1ヶ月ほどが経過した今では自己位置推定の精度も上がり、定められたA地点からB地点までを問題なく自動走行することができるようになっています。今後は、人やモノなどの障害物を検知した際に適切なアクションを取れるのか、などの検証を進めて行く予定です。またATC地下の物流センターや屋外、半屋外など、さまざまな環境でも実証実験させていただけるので、さらに広い空間や外光の照度による違いなどについても、検証していきたいと考えています」
シュミット氏
「実証実験中も、さまざまな改善を行っています。先日、車両ロボットにロボットアームの取付が完了したので、車両のみの状態との違いも検証していきます。また最終段階では、本ソリューションのプロモーションビデオも撮影予定です。よく見せるために作り込まれたものではなく、嘘偽りのない本当の状態をお客様にお見せできればと思っています」
#どのようなきっかけで、今回の実証実験を行うことになったのですか?
桑原氏
「実は弊社の大阪在住の社員が、ATCの3階にある『一般社団法人i-RooBO Network Forum』のインキュベーションオフィスを利用して、日々の業務を行っていたのが今回のご縁です。『今回のような実証実験を行える良い場所は無いのか?』というのは常々議題に上がっていて、関東にも実証実験スペースはあるものの、なかなか私達の求めている環境に近いものは見つかりませんでした。そんな時に大阪の社員からATCが利用できるIoT・ロボットビジネス実証実験支援プログラムを聞いて、応募させていただきました」
#実際に実証実験で利用してみて、どのような感想をお持ちですか?
桑原氏
「とても良い環境で実証実験が行えています。実験環境としても場所の広さや路面の違い、時間帯による人の流れや明るさの違いなど、さまざまなシチュエーションがあるので、いろいろな角度からデータ収集が可能です。それに今回はタイミング良く6階の開発ルームの運用がスタートしたということで、無償で10畳ほどの開発場所を利用させてもらっています。この場所があることで実験効率は格段に上がりました。テストして問題があれば改善して、すぐに検証ということを繰り返せるので、没頭して時々夜間まで作業してしまうこともありますが(笑)。開発ルームには鍵も掛けられるので、実証実験期間中は機材などを保管しておけることも、実験コストの削減につながり助かっています」
#本ソリューションの今後のビジネス展開について、教えてください。
シュミット氏
「主なマーケットとしては製造や物流分野での利用を想定しており、現段階でも『ZIA MOVE』を利用した自動走行は80~90%は出来上がっています。残りの10~20%の要素はお客様の環境や運用状況について詳しく知ることで、それらに合わせた開発・カスタマイズしていくことで利用可能です。お客様の求める走行スピードや作業精度などに応じて、バランスよく調整することが求められます。現状ではお客様ごとにカスタマイズする必要がありますが、将来的にはプロダクトをライセンス提供することで、どのようなお客様にも汎用的に利用していただけるソリューションに成長させたいと考えています」
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)