『 デジタルモノづくりの可能性~ハードウェアベンチャーexiiiの取り組み~ 』セミナー「メイカーズバザール大阪」開催報告【2】
■セミナー
セミナー会場内では、2日間にわたってさまざまなセミナーが開催されました。
12日にはイメディオ主催で、exiii共同代表の山浦博志氏による「デジタルモノづくりの可能性~ハードウェアベンチャーexiiiの取り組み~」と題したセミナーを開催。開始直前には会場が満席となり、急遽座席数を増やして対応するほどの盛り上がりを見せました。
exiiiが生み出すのは、筋電義手と呼ばれる手を失った人が残された筋肉の電気信号を介して動かす義手。すでにこうした製品は市場に出回っていますが、どれも数百万円と大変高価です。exiiiが目指すのは、3Dプリンタやスマートフォンを活用することで価格をわずか数万円に抑えつつ、新たにファッション性を付加することで新しい筋電義手の市場を創造しようとしています。
今回のセミナーでは、筋電義手『Handiii』の開発プロセスや特徴、デジタルモノづくりの可能性について語られました。
1) 筋電義手『Handiii』の開発
学生時代、もとも筋電義手の研究をしていた山浦氏。卒業後はデジタルカメラの設計開発に従事しながら、趣味の範囲で筋電義手の研究を続けていたそうです。そんな中、被験者との出会いやJAMES DYSON AWARD 2013で国内2位、国際準優勝の成績に「これは本気でやらなければ」と考え、仲間とともに3人で『exiii』の設立を決意しました。
義手の世界は、装飾用義手と作業用義手に大別され、用途やシーンによって使い分けている人が多いそうです。筋電義手『Handiii』が目指したのは、安価でありながら機能的でスタイリッシュな筋電義手という新たな市場。同時に「気軽に選べる」という選択肢を提供することも目指しています。今後は、部品数を減らして低価格化しながらも高いデザイン性を持たせて人気となった時計『Swatch』を引き合いに、「筋電義手のSwatchを目指す」そうです。
今回、山浦氏らが開発した『Handiii』が他の筋電義手よりも安価な理由として、以下の3点を挙げていました。
1)制御にスマートフォンの情報処理能力を利用していること
2)3Dプリンタで部品を製作していること
3)駆動用モータの数を減らしていること
また、CADソフトをはじめとしたさまざまな無料開発ツールを利用したことや、機能を絞ってあくまで健常手をサポートする役割に特化したことなどが、低価格化を実現した大きな要因なのだとか。
このあと、『Handiii』の動作デモが行われ、多くの人が興味深くその動きに注目していました。
2)今後の展望
まず『Handiii』でも活用している3Dプリンタの爆発的普及は間違いなくすぐそこまで来ており、Web上でプリントアウトする立体物のデータを入手することが一般化するだろう、と山浦氏。アメリカではすでに親が子どものために3Dプリンタなどを使って義手を作り、子どもにプレゼントすることも可能になっているそうです。
また、2020年の東京パラリンピックで『Handiii』を身につけた選手が活躍する姿が見られることを目標にしているとのこと。
3)デジタルものづくりの可能性
3Dプリンタによる施策の効率化などが進み、世界は大量生産の時代から適量生産の時代に突入する、と山浦氏。また、誰もがものづくりできる時代に突入し、小ロット生産が可能な工場が増えていくほか、3Dプリンタ独自のコスト削減方法が生まれることになるだろうと予測していました。例えば、3Dプリンタがコスト的に有利なのは数個程度の場合のみというイメージですが、実際には数百個、数千個でも金型製作より安価に製作できるケースも出てきているそうです。
セミナー後は、実際に3Dプリンタを製品レベルで活用していることや、制御に情報処理をスマートフォンで行うことでコストを下げるという発想に興味を持ち、多くの人が山浦氏のもとに集まり、実際の筋電義手のデモを見たり、質問していました。