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2026年01月15日その他

【レポート】生成AIで関西の「現場」を変える挑戦者たち|TEQS Generative AI QUEST 2025

2025年12月11日、 大阪産業局が主催する生成AI特化型プログラム「TEQS Generative AI QUEST」の集大成となるデモデイが開催されました。
会場となった大阪・阪急梅田駅直結のコミュニティスペース「NORIBA 10 umeda」は、AIで未来を変える熱気に溢れていました。

デモデイ イベントの開始は午後2時。
まずは概要説明から始まり、続いて遠藤太一郎氏と南野充則氏によるAIの未来や人材に関する基調講演が行われ、聴講者の関心が徐々に高まっていきます。
その後、「TEQS Generative AI QUEST」のプログラムを終了した参加チームによるプレゼンテーションがスタート。 前半は4組が登壇し、休憩を挟み、後半は7組がそれぞれの成果を発表しました。
すべての発表後、審査委員の中で協議が行われ、いよいよ運命の審査発表へ。

約3ヶ月間に渡って、AIと真剣に向き合った参加チームの中から、最優秀賞、優秀賞を獲得した3チームのプロダクト紹介と喜びのコメントを中心に、今回のレポートをお届けします。



最優秀賞プロダクト紹介

眠れる「横型資産」を「縦型バズ動画」へ。
テレビマンが開発した、動画制作・運用の革命的AIツール

谷知 紀英 氏
AIを用いたSNS用の縦型動画変換アプリ


若者のテレビ離れと、スマホによる「縦型動画」の視聴習慣の定着。
テレビ局が抱えるこの構造的な課題に対し、技術開発畑のプロフェッショナルがひとつの解決策を提示しました。それが、既存の横長動画資産をAIの力で瞬時に縦型コンテンツへ変換し、SNS運用までを自動化するオールインワンツールです。

■ 編集時間を85%削減。AIが「見せ場」を理解する
本ツールの最大の特徴は、放送用の横長動画から、スマホに最適な「縦型動画」を爆速で生成する機能。単に映像の中央を切り取るのではなく、AIがシーンの切り替わりを100%検出し、被写体(人物や動くもの)を自動で追尾します。さらに「人が見つめ合うシーン」のような情緒的な場面では、あえて手動調整の余地を残すなど、映像制作者の意図を汲み取れる設計になっています。
これにより、従来の手作業では膨大な手間がかかっていた編集作業が、かなりのスピードでほぼ自動で完了。作業時間を85%以上削減し、コンテンツのリサイクルを劇的に加速させます。

■ 作るだけではない「バズる」ためのSNS運用まで完結
動画が完成しても、見られなければ意味がありません。本ツールは編集のみならず、その後の「拡散」までをAIがサポートします。
動画の内容を解析し、YouTube Shorts、TikTok、Instagramなど各プラットフォームに最適な「タイトル」「投稿文」「ハッシュタグ」を自動生成。さらに、競合アカウントの分析や、トレンドに基づいた「バズる企画」の提案まで行ってくれます。

■ プロの技術を、すべての人へ
開発者の谷知紀英氏は、読売テレビで長年技術開発を担ってきたエキスパートです。「緑好き」が高じて2026年には「緑グリーン株式会社」を設立予定とのこと。
「テレビ局のクオリティを、個人や一般企業でも手軽に扱えるようにしたい」という想いから、月額980円〜(予定)という驚きの低価格帯を実現。
プロの技術とAIのパワーを融合させ、動画マーケティングの常識を覆すこのツールは、まさにテレビとSNSの垣根を壊す架け橋となることが期待されます。

【受賞コメント】
テレビ局グループ会社の役員が土日15時間を費やしたAI開発。
「5分間の勝負」を制し、最優秀賞へ

「最優秀賞」という結果は、必然だったのかもしれません。平日はテレビ局グループ会社の役員として働き、帰宅後すぐにPCを開き、土日は1日15時間、AIと向き合い続けた谷知紀英氏。そんな圧倒的な熱量で生み出されたのは、動画編集からSNS運用までを自動化する、まさに「AIを使い倒した」サービスでした。
見事、最優秀賞を受賞した開発者の谷知氏に喜びの声をお聞きしました。

ー最優秀賞、おめでとうございます。開発だけでなく、プレゼン資料から動画編集、分析まで、すべてAIを活用されたそうですね。

ありがとうございます。
はい、開発はもちろん、プレゼン資料の作成、動画のシーン切り抜き、SNSでバズるタイトルの提案からハッシュタグ生成まで、文字通り「AIの能力を余すことなく」使い倒しました。
平日は会社勤めですが、夜と土日はもう、AIとひたすら壁打ちの日々で(笑)。

ー休みはずっとAIを触っていたということですね。その熱量はどこから来るのでしょうか?

単純に「楽しい」というのもありますが、今回は価格設定や運用コストの計算まで、AIと相談して緻密に詰めました。皆さんに驚かれた「980円」という価格も、AIによる市場分析とコスト試算から導き出したものなんです。

ー3ヶ月間のプログラムで、当初から変化した点はありましたか?

実は、メンターの先生方の言葉がなければ、この領域まで辿り着けませんでした。
当初は「動画編集システム」だけを作って満足しかけていたんです。でも南野先生に「そこまでできるなら、運用まで考えてみたら?」と言われ、ハッとしました。「できること」で満足していた自分に気づき、そこからSNSアプリまで一気に作り込みました。
また、栄藤先生からは「テレビ局向けだけでなく、個人向けにもいけるのでは?」とアドバイスをいただき、ビジネスの視点がガラリと変わりました。自分一人では「1カスタマー」の視点が抜けていたんですね。

ー技術面だけでなく、視座が引き上げられたわけですね。

そうですね。遠藤先生に「開発スピードが早い」と褒めていただいた時は、夜も眠れないほど嬉しくて(笑)。尊敬する方々からの言葉を全て吸収しようと、必死に食らいついた3ヶ月でした。

ー本日のデモデイでのプレゼンも圧巻でした。

これまでテレビ局の技術発表などでプレゼン経験は何度もありましたが、「5分」という短さは初めてでした。伝えたいことは山ほどあるけれど、時間は限られている。それこそ資料を見なくても一言一句言えるくらい、徹底的に練習しました。その制約があったからこそ、サービスの核を研ぎ澄ますことができたと思います。

ー来年には起業されるそうですね。

はい、来年4月には会社を設立します。
このツールを世に出すのはもちろんですが、関西でAIをもっと盛り上げたい。ツール開発だけでなく、AI人材を育てる研修やコンサルティングにも力を入れていく予定です。
今度は私が教える側として、還元していけたらと思っています。

ー最後に、AI Questの参加を検討している方へ一言お願いします。

起業を目指す方も、社内で新規事業を担当される方も、すべての方にお勧めします。
自分一人で作ったものと、専門家の厳しい目を通して磨かれたものとでは、完成度がまるで違います。ここで得られる「視点」こそが、何よりの財産になるはずです。



優秀賞プロダクト紹介
印刷業界の「色合わせ」時間をゼロへ。
AIと職人の技が融合した「見たまんまプリント」

株式会社CHU-PA
見たまんまプリント〜色校正ゼロを目指して〜


モニターで見ている色(RGB)と、実際に印刷された色(CMYK)が違う。
この「色のズレ」は、印刷業界にとって永遠の課題です。一度ズレが生じれば、修正と再校正のために2週間ほどのタイムロスが発生することさえあります 。
そんなアナログな現場の常識を、大阪・八尾市のパッケージを扱う商社「株式会社CHU-PA」が、AIの力で覆そうとしています。

■ なぜ、印刷の色はくすんでしまうのか?
発表者の朱新昊氏が指摘するのは、そもそも「色の作り方」が違うという根本的な問題です。
光を足して白を作るモニター(RGB)に対し、インクを混ぜて暗くなる印刷(CMYK)では、表現できる色の範囲が狭く、どうしても鮮やかな色がくすんでしまいます。従来、このズレを補正するのは熟練オペレーターの「勘と経験」だけが頼りでした。

■ AI×匠の技で「感性」を再現する
そこで同社が開発したのが、AI色校正システム「見たまんまプリント」です。最大の特徴は、単にデータを学習させるだけでなく、「熟練技術者の意見」をAIの補正プロセスに組み込んだ点です。
「もう少し明るく」「鮮やかに」といった、数値化しにくい人の感性をAIに学習させることで、機械的な変換では出せない「見たまんま」の美しさを追求しました。

■ 「2週間」のロスを「一発OK」へ
実証実験では、従来の自動補正で発生していた「くすみ」を解消し、よりモニターの見た目に近い明るい発色を実現しました。色の差異を示す数値も、従来システムと比較して大幅に改善されています。
「100点満点まではあと少し」と朱氏は語りますが、この技術が完成すれば、専門のオペレーターがいなくても、誰でも一発でイメージ通りの印刷データが作れるようになります。
それは単なる効率化ではなく、クリエイターや現場が抱える「色が合わないストレス」からの解放を意味するとのことです。

【受賞コメント】
「色校正」の職人芸にAIで挑む。
ニッチだからこそ面白い、ゼロイチへの挑戦

印刷業界につきものの「色校正」の問題。
モニターの色と印刷物の色が合わない、という永遠の課題は、これまで熟練の職人の目と経験に頼るしかありませんでした。そんな難題に、プログラミング初心者がAIを駆使して挑み、「優秀賞」を獲得。その背景には、AIツールの進化と、泥臭い試行錯誤がありました。

ー今回の優秀賞、おめでとうございます。今回のプロダクトで、AIが最も活用されたのはどの部分でしたか?

ありがとうございます。
一番はやはり「コーディング」ですね。私自身、プログラミング経験は大学で少し触った程度で、自信は全くありませんでした。
「こういうものを作りたい」という要件をAIに投げかけ、ベースとなるPythonのコードを書いてもらう。いわばAIと相談しながら二人三脚でシステムを組み上げました。ゼロから自分で書こうとしていたら、勉強の時間だけで3ヶ月は終わっていたと思います。

ープログラミングの壁をAIで突破したわけですね。

そうですね。特に印象的だったのは、開発途中でChatGPTを有料版に切り替えた瞬間です。
最初は無料版で試行錯誤していたのですが、すぐに制限がかかるし、精度もいまひとつ。思い切って課金してみたら、世界が変わりました(笑)。
コード生成の精度はもちろん、画像の分析もファイルを投げ込むだけで一瞬です。まさに「爆速」という言葉がぴったりで、これでなんとか期限に間に合いました。

ー開発の中で、当初の計画から変更した点はありましたか?

いえ、そこは「初志貫徹」でした。
メンターの方からは当初、「色校正をAIで完璧にやるのは物理的に難しいのでは? 落とし所を見つけよう」というアドバイスもいただきました。確かにその通りなんですが、簡単なことをやっても面白くないな、と(笑)。
あえて難しいニッチな分野を攻めて、合格点ギリギリでもいいから形にする方が面白い。そう思ってゴールは変えずに、学習データの与え方や現場の意見を取り入れながら突き進みました。

ープログラムに参加して、ご自身の中でどんな変化がありましたか?

実は、AIの知識以上に「本業の知識」が深まりました。
これまでは印刷会社さんにデータを渡して、「色が違います」と言われたら「そうですか、直します」という受け身の姿勢でした。
でも今回、自分で色の仕組みや判定ロジックを必死に勉強したことで、印刷会社の方とも専門的なレベルで対等に話せるようになりました。これは大きな収穫ですね。

ー最後に、次回の参加者へメッセージをお願いします。

「ゼロをイチにする経験」は何物にも代え難いです。
一人だと「やりたいな」と思っているだけで終わってしまいますが、このAI QUESTでは「やらざるを得ない環境」があります。テーマを決めて、周りからのプレッシャーを受けながら走り抜けることで、AIの使い方も自然と身につきます(笑)
結果や出来栄えよりも、まずは一歩踏み出して「作った」という事実が、見える世界を変えてくれると思いますね。



優秀賞プロダクト紹介

日本アスペクトコア株式会社
AIキャラクターがガイドする!観光客向け周遊体験を提案


空港が近くてアクセスは良いのに素通りされてしまう。そんな「通過型観光地」の悩みを、AIと「地元住民の井戸端会議」で解決しようというユニークな試みが「ジモザワ」です。
日本アスペクトコア株式会社が提案するのは、ネット上の検索では出てこない「ディープデータ(地元住民しか知らない情報)」を活用した、新感覚の観光周遊サービスです。

■ コンセプトは「噂」と「Deep Data」
サービスの核となるのは、「ジモザワ(地元がざわついている)」というコンセプト。「〇〇のお店の裏メニューが美味しいらしい」「あそこの景色、今が最高らしい」といった、確証はないけれど魅力的な噂レベルの情報です。
公式ガイドブックに載るような「表の情報」ではなく、地域住民のリアルな会話の中に眠る「Deep Data」こそが、観光客をその土地に留まらせるフックになると定義しました。

■ 住民と観光客が「クマ」と LINEで繋がる生態系
システムは、誰もが使い慣れたLINEをプラットフォームに採用。
●住民側: おすすめスポットや地元の噂をLINEで「クマクマ組合」へ投稿。自分の情報が採用されると称号が得られるなど、ゲーム感覚で地元愛を育みます。

●観光客側: AIキャラクターの「クマクマ観光」がコンシェルジュとなり、ユーザー(観光客)の好みに合わせて、噂をこっそり教えてくれます。「寒いから温かいものが食べたい」と言えば、「地元で評判のクマ鍋があるらしいよ」と提案してくれるのです。

■ 「文字」か「動画」か。旅ナカ情報の最適解
質疑応答では、インターフェースのあり方について活発な議論が交わされました。
「LINEという選択は手軽で良いが、現代の旅行者はInstagramやTikTokのような『動画・画像』で直感的に探すことに慣れているのでは?」という鋭い指摘もありました。
これに対し、開発チームは「まずは地元住民が参加しやすいLINEから始め、将来的には動画メディアのような『一覧性』を取り入れることも検討したい」と回答。情報の鮮度(噂は75日)を管理しながら、いかに直感的な「行きたい」を作るかが今後の鍵となりそうです。

【受賞コメント】
「自主参加」から「会社公認」へ。
3年越しで掴んだ優秀賞と、AIが繋いだチームの足跡

技術の習得だけがゴールではない。そこには、組織を動かし、人と繋がり、自分たちの殻を破るエピソードがありました。
そのデモデイにて、見事「優秀賞」を受賞された日本アスペクトコア株式会社のチームメンバーにお話を伺いました。彼らの受賞の裏には、3年にわたる「社内での奮闘」と、諦めない情熱を聞かせていただきました。

ー優秀賞、本当におめでとうございます。お聞きしたところによると、今回で3年連続の参加だそうですね。

ありがとうございます。そうなんです、実は最初は会社主導ではなく、完全に社内の有志メンバーで参加を始めたんです。会社で「G検定(AIの検定)を取ったけれど、それをどう活かそうか」となった時に、このプログラムを見つけました。
1年目は「やってみたい」という有志数名で、ある意味コソコソと参加したカタチです(笑)。東京の会社なので、大阪の別の仕事の予定と抱き合わせて来ていたりしていました。
それが2年目、3年目と続けるうちに少しずつ成果が見え始め、ようやく今年からは会社を説得してなんとか予算がついたんです。今回は総勢10名いるメンバーでローテーションを組んで、堂々と大阪に来てプログラムに参加ができました(笑)。

ー自主参加から、予算獲得、そして受賞へ。まさに継続の賜物ですね。今回の開発テーマではどのようなことを感じましたか?

「観光×AI」をテーマに、LINEを活用した案内サービスを開発しました。
1~2年目と大きく違ったのは、当社内の課題解決ではなく、「外」に目を向けたことです。実際に観光協会の方にお話を聞きに行くなどして、机上の空論で考えるのではなく、現場の声と向き合うことで機能がより具体的になったと思います。
今やプログラミング経験がないメンバーでも、AIを活用することで「動くもの」が作れる時代です。コードを書くこと以上に、「誰のために、何を解決するのか」を突き詰められたのが大きかったです。

ーAI Questのような社外プログラムに参加する最大のメリットは何だと感じましたか?

やはり「社内の常識が通じない」という刺激です。
社内だとどうしても共通言語で話をして納得してしまいがちですが、メンターの先生方は「それって誰が得するの?」「なんでやるの?」と、忖度なしの本質的な問いを投げかけてくれます。その緊張感は社内研修では得られません。
また、他の参加チームのスピード感にも圧倒されました。周りの参加チームが「次はここまでやってきます!」と宣言して、本当に仕上げてくる。あの周りからお尻を叩かれるようなヒリヒリした感覚も、私たちの成長にも不可欠でした。

ー最後に、これからAI活用を目指す方へメッセージをお願いします。

「まずは一歩踏み出してみる」に尽きます。
最初はAIを使うのが怖かったり、よく分からなかったりしましたが、触ってみると景色が変わります。今回、こうして結果(優秀賞)を持ち帰れることで、会社に対しても「やってよかったでしょ!」と胸を晴れますしね(笑)。
迷っているなら、まずは飛び込んでみることをお勧めします。

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