【イベントレポート】中之島ロボットチャレンジ2023 ATCエクストラチャレンジ レポート 2023年11月26日(日)
【中之島ロボットチャレンジ2023 ATCエクストラチャレンジ レポート】
昨年に引き続き、2023年11月の4日間に渡って「中之島ロボットチャレンジ2023 ATCエクストラチャレンジ」が、大阪南港の商業施設「アジア太平洋トレードセンター(ATC)」内で実施されました。今回は、本走行が実施された11月26日(日)の模様を中心に、本イベントのレポートをお届けします。
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中之島ロボットチャレンジ2023
ATCエクストラチャレンジとは?
茨城県つくば市で開催される自律走行ロボットの技術会『つくばチャレンジ』を参考に、2018年に大阪で誕生した『中之島ロボットチャレンジ』。現在はチーム大阪の実証事業として認められ、関西での自律走行ロボットの実証実験の場として定着を目指しています。
発足当初は5チームで中之島の中央公会堂周辺で実施。2019年からはエクストラチャレンジとして扇町公園などでも自律走行実験を実施しています。さらに2021年には自律走行だけでなく、ロボットアームなどによるゴミ回収課題を追加することで、ゴミ処理の省力化につながるロボットシステム開発を打ち出しています。
そして2022年からはエクストラチャレンジの舞台として、初めて屋内外を走行するアジア太平洋トレードセンター(ATC)で実施され、今回で2年連続の開催となりました。
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ATCエクストラチャレンジ概要
日程
実験走行 11/4(土)、11/5(日)、11/25(土)
本走行 11/26(日) 13:00~15:00
レギュレーション
自律走行部門
ATC(O’s棟)周囲の約1.1kmのコースを、自律走行または遠隔操作にて1周する
ゴミ収集部門
屋内の特定エリアにてゴミ収集を行う
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本走行 当日の模様
肌寒くも晴天に恵まれた、2023年11月26日(日)の大阪南港エリア。20以上の参加チームがアジア太平洋トレードセンター(ATC)に、自分たちの技術と想いを込めたロボットと一緒に集まっていました。実験走行日だった11月4・5日はATCで人気イベントが開催されていたこともあり、多くの来館者が押し寄せ、各チーム機体の調整にかなり苦労していましたが、本走行当日はATCでも珍しくイベントが少ない日曜日で、より穏やかでベストな環境で各チームチャレンジできそうな状況です。
13時の本走行開始前に各チームのブースを覗いたところ、ゆったりと昼食を食べている人や午前のテストの調整を行う人、機体を車検に通すために必死に作業を続けている人々など、各チームが思い思いの時間を過ごしていました。
13時の本走行では『神戸高専ロボティクス』チームを皮切りに、2分30秒間隔で、続々と各チームのロボットがスタート。コース自体は昨年度と同じですが、大きな違いがスタート位置です。昨年度はスタート位置を屋内としたことで、GPSやLiDARなどで自己位置推定するロボットたちが、なかなか自己位置を見つけ出せずスタートできないチームが続出。今年度はスタート位置を屋外に変更したことで、各チームともに順調に前進を始めていました。
しかしながら、今年度もATC(O’s棟)の屋内外を巡る約1.1kmとなる長丁場の難コースです。コース内にはスロープや自動ドア、エレベーターなどの難所が組み込まれている他、荒れた舗装路や来館者の往来などのトラブル要因がいくつもあり、各チームともに苦戦する場面も。実際に無事に完走できたチームがいる一方で、残念そうな面持ちで手動操縦しながらスタート位置へ、とぼとぼと戻るチームも見られました。
15時からはATC(O’s棟)の特設エリアにて、ゴミ収集チャレンジがスタート。今年度は自律走行部門とゴミ収集部門を別々に実施されました。ゴミ収集部門には全4チームがエントリーし、3チームがゴミ収集専用ロボットを準備。1チームは自律走行部門と同じ機体での参加となりました。各チームのロボットが、床やテーブルに散乱したゴミをゆっくりと拾い上げる様子を、審査員と参加者の皆さんが固唾をのんで見守っているのが印象的でした。
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参加チームの声
チーム名:神戸高専ロボティクス
ロボット名:ナビトン
ATCエクストラチャレンジには2年連続の参加です。昨年も自律走行機能については問題ありませんでしたが、ゴミ収集機能についてはロボットアームを後付した状態でしたので、今年度はアーム機能を踏まえた新しいロボットをゼロから開発しました。
開発で難しいのはLiDARの取り付け位置ですね。低いほうが障害物を見つけやすくなりますが、段差や下り坂などでは地面を障害物と誤認こともあります。ナビトンでは地面から20cmの位置にLiDARを取り付けました。それに加えて上部に取り付けた3D LiDARで、自己位置推定を行いながら、ゴールまで進んでいきます。
チーム名:宇都宮大学REAL
ロボット名:kosobot
中之島チャレンジへの参加は2019年以来なので、4年ぶりになります。宇都宮から教授の車に乗ってみんなで来ました(笑)。
テスト走行時はイベントで人が多くて何度か止まってしまいましたが、今日は今のところ順調に進めています。と言っても、昨日のテスト時点でいくつか課題があったので、ホテルに戻ってなんとか応急処置を施して本番を迎えた状況です(笑)
センサーにはLiDARを使用していますが、試験的にWi-Fiアンテナも付けていて、将来的にはWi-Fiの電波強度で自己位置推定できればと思っています。
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■主催者
事務局長
株式会社プロアシスト 猪熊一行氏
今年度でATCエクストラチャレンジは2回目となります。まず大きな変更点はスタート位置を屋外に変えたことで、最初の難易度を下げました。昨年度は平坦で特徴の少ない屋内をスタート位置にしたことで、GPSやLiDARなどを利用しているロボットの多くが自己位置推定できず、スタートできない場面が多くありましたので、そこが大きな改善点です。
それでもATCはエレベーターやスロープ、自動ドアなど、起伏のある面白いコースなので、やりがいはありますね。
また昨年に比べて参加チーム数が増えました。昨年まではコロナの影響でチーム数を制限しておりましたが、5類になったこともあり、新規のチームや以前より参加していただいていたチームなど、関西圏外からの参加も増えております。
各チームのロボットには技術的進化も感じました。GPSやLiDARなどの精度も年々向上していますし、カメラによるナビゲーション機能を付加したロボットもあり、より高度に自律走行できるものが増えていると思いますね。
今後もATCエクストラチャレンジは引き続き行っていきたいですし、伝統の中之島チャレンジも2024年1月に実施予定ですので、また注目していただければ嬉しいですね
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■主催者
委員長
神戸市立工業高等専門学校 清水俊彦氏
自律走行部門は2年目ということもあり、完走チームが多い印象です。ゴミ収集部門でも昨年に比べて各チームがブラッシュアップされた成果もあり、良い結果を残しているチームが多くみられます。
各チームのロボットを見させてもらいましたが、技術レベルの向上は本当に素晴らしいです。久々の参加となった宇都宮大学さんは自律走行の製品も出されているだけあって、限られたシステム構成でも高精度な技術をお持ちで流石だと感じましたし、北陽電機さんは新開発センサーを試されるために新しい機体をご準備されて、それぞれがいろいろな技術を披露してくださっていて、本当に良い技術交流の場となっています。
また各チームが昨年の課題をブラッシュアップして改善してくださっているのが見られて嬉しいですね。自律走行だけでなく遠隔操作に対応したり、エレベーターも自律走行で乗り降りしたりと、細かい部分においても技術の幅が広がっていることも、大変良かったと思います。今後とも継続していきますので、またよろしくお願い致します。
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)