話題の「IoT・M2M」って何?~この強力かつ広範囲な概念をいろんな角度から眺めよう
2015年5月21日にイメディオ・制作技術セミナーとして、『話題の「IoT・M2M」って何?~この強力かつ広範囲な概念をいろんな角度から眺めよう』を開催しました。
今回のセミナーは、IoTや電子工作に関する執筆や講師活動はもちろんのこと、組み込み系やネットワーク系の技術教育なども行うトライアングルエレクトロニクス代表・久保 幸夫氏が講師を務めました。
1)IoT/M2Mとは
IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)というキーワードはよく聞きますが、実際にどんなモノなのか正しく把握している人はそう多くないはず、と久保氏。それにはきちんと理由があり、強力なキーワードでありながら、カバーする範囲がかなり広いことから、人によって定義する範囲が異なっているからだそうです。
また、IoTとM2Mというキーワードについても明確な使い分けはされていないのが現状とのこと。
このように、IoT/M2Mは多様性に富んだ領域を含有していて、ともすれば「言葉の渦」に溺れてしまって混乱してしまうようです。つまり、同じ「IoT/M2Mセミナー」と銘打たれていても、著者や講演者の立ち位置によって見るもの、見る角度、扱う内容はまったく異なってしまうので注意が必要です。
2)用途や分野から見るIoT/M2M
ここでは、IoT/M2Mをさまざまなドメイン(業界や分野)から眺めて、分類し、整理しました。例えば、電力会社や電機メーカー(重電系)企業からみると、エネルギー監理システム(EMS)やスマートグリッド※を主軸とした、IoT/M2Mの世界を見ることができる、といった具合。ここでも先ほど同様に「同じIoT/M2Mというキーワードであっても、同じ意味を指すとは限らない」点に注意が必要とのこと。
また、センサーデバイスからデータを吸い上げ、ビッグデータとして活用するサービスは注目されているが、逆にサーバーや、クラウドサービス側からコントロールする「制御(動かすための機器)」にはあまり注目されていない。今後はこのあたりが注目されるのではないかとの見解でした。
※スマートグリッド:通信・制御機能を活用して停電防止や送電調整のほか多様な電力契約の実現や人件費削減等を可能にした電力網。(引用元:Wikipedia)
3)すでに始まっているIoT/M2M
すでに、IoT/M2Mはさまざまな分野や業種で実用化されているそうです。例えば、重機メーカーのコマツのコムトラックス、各電鉄が使用している交通系ICカードなどです。
これらは、10年以上の実績があり、成果が出ている。ただし、JR東日本のSuica履歴販売の失策は、IoT/M2Mシステムから生まれるビッグデータ関連ビジネスにおける問題点を示す結果となっている。ただ、これまでのIoT/M2Mシステムは、標準化されていない独自仕様のものがほとんどで、標準化に関してはまだまだこれからというのが現実。
4)技術や仕組みから見るIoT/M2M
ここではIoT/M2Mを実現するための技術、各種センサやデバイス、モノの通信を実現するためのマイコン、開発を行うためのプラットフォーム、通信プロトコルなどについて簡単な解説がありました。
環境検知、位置・移動情報、バイタル検知、物理量、電気、気象、土壌…など、各種センサが存在します。自分が求める適正なデータを取集するためにはセンサの知識が必要。また、ArduinoやRaspberry Piといった高速プロトタイピング向けマイコンが多く出てきているので、上手に組み合わせて活用していくこと。ただし、量産には組み込みマイコンの活用も必要。
さらにIoT/M2Mプロトコルについても解説があり、業界別のシステムの例として、HEMSのプロトコルとしては、ECHONET。BEMSには、IEEE1888などの種類があるが、汎用的なプロトコルの標準化は、これからの課題とのこと。
5)これからすべきこと
今後IoTに取り組む上では、
・標準化の動向に注目
・プロトタイプでノウハウを蓄積する
・セキュリティやプライバシー、電波混雑や電源などに注意
の3点が久保氏から挙げられました。
中でも標準化の動向に注意を払うことが重要だ、と久保氏。
標準化により垂直方向に繋がっていたものが、水平方向に繋がることになり、普及につながると予測していました。ただ、指をくわえて標準化の確定を待っているわけにはいかないので、変わることを前提に設計や構築を進めていくことで対応するべきとのことでした。
また、IoT/M2Mにおいては、ビッグデータの収集とデータ分析などの活用分野、ネットワークやストレージなどのインフラ分野、センサーやマイコン、無線などノードの組込みシステムの分野、など複数のジャンルにまたがる知識が必要で、全体を俯瞰して構成、デザインできる人が
不可欠となるだろうとのこと。また、複数の専門分野を持つ技術者を、上手く束ねることも大切だ。そういった意味でも、IoT/M2M時代のプロジェクトマネージャーは大変だろう、と。
懇親会
セミナー後は、懇親会を開催
IoT/M2Mに興味がある人同士の交流は、日常の交流会とは少し違った雰囲気だったようで、この日が初対面という人が多かったにもかかわらず、参加者同士で非常に話が盛り上がっていました。
当日のセミナー資料が一部WEBにて公開されています。
講師の久保先生から「通信プロコルや無線デバイスの話は2時間では喋り切れないこともあったので、もう少し詳しいIoT/M2Mのセミナーを企画していきたい」とのお話をいただいています。今後企画が決まり次第、イメディオのツイッターやメルマガなどで案内してまいりますので、ご確認ください。
これから開催する 電子工作セミナー
2015年6月24日(水)
話題の小型パソコン基板Raspberry Piで電子工作入門~イメディオ電子工作部
講師:久保 幸夫氏(トライアングルエレクトロニクス代表)
2015年7月16日(木)
Arduinoプログラミング入門「内容刷新!来客数カウンターを作る」~電子工作部
講師:植田 崇靖氏(合同会社UESEI代表)