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2023年04月15日実証実験

【実証実験インタビュー】縦型オールインワン型IoT降雨計での集中豪雨の遠隔監視


実施主体
古田兼三/TSTジャパン株式会社

実証実験内容
縦型オールインワン型IoT降雨計での集中豪雨の遠隔監視

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2023年9月22日(金)から2024年3月15日(金)にかけて、IoT・ロボットビジネス実証実験支援プログラムとして、TSTジャパン株式会社による実証実験「縦型オールインワン型IoT降雨計での集中豪雨の遠隔監視」が、大阪・咲洲の複合商業施設ATCで実施されました。今回は実施者でありTSTジャパン株式会社 代表取締役でもある古田兼三氏に、実証実験の概要や目的について伺いました。

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●まずTSTジャパン株式会社の事業内容について、ご説明ください。

TSTジャパン株式会社は、スペインのTST Sistemas社の日本法人として2020年8月に設立された会社です。TST Sistemas社は欧州のスマートシティのモデル都市であるスペイン北部サンタンデール市に本社を置くCELESTIAグループの会社で、IoT機器の開発に強みを持っています。私は、そのTST Sistemas社と前職でつながりがあり、日本で事業展開するにあたって、日本法人『TSTジャパン株式会社』の代表取締役に就くことになりました。高い開発力を持つスペインのTST Sistemas社の製品を、実際の現場での実用化などにおいて支援していくのが、私たち『TSTジャパン株式会社』の仕事になります。

●今回の実証実験で使用した製品は、どのようなものですか? 
また、どのようなきっかけで、今回の実証実験に至ったのですか?

今回の実証実験で使用したのは、オールインワン型超音波式距離センサー『Nivelwatcher(ニベルウォッチャー)』を搭載した降雨計になります。Nivelwatcherの特徴は、超小型で軽量かつオールインワン型のセンサーで取付も簡単です。電池稼働で電源は不要ですし、遠隔操作によって機器の情報を取得できるのでメンテナンスフリーの製品となっています。
 このNivelwatcherでは、これまでに潮位や河川水位、積雪量などの測定を行った実績はありました。そこで次は、近年問題視されているゲリラ豪雨対策として、降雨量の測定がNivelwatcherでも行えるのではないかと考えたことが、今回の実証実験につながっています。現状の天気予報では雨雲レーダーで雲の位置は観測されていますが、その雲の下で実際にどの程度の雨が降っているのか正確にはわかっていません。アメダスの観測計も約20km間隔に設置されているだけなので、その間の区間の降雨状況がわからないんです。そのような現状を踏まえて、私たちのNivelwatcherを使用した降雨計を大阪府・大阪市に多数配置することで、ピンポイントな地域での降雨量を調査する実証実験を行うことにしました。

●実証実験の概要について教えてください。

2023年9月22日(金)から2024年3月15日(金)にかけて、大阪市内を中心とした大阪府内で約20箇所にNivelwatcherを搭載した「縦型オールインワン型IoT降雨計」を設置しました。大阪市内にはATCをはじめ各箇所にメッシュ状に配置することで、点ではなく面の観測データ取得を目的とする基礎実験としました。その一方で、能勢町・堺市・八尾市ではアメダスの観測計付近に設置することで、「縦型オールインワン型IoT降雨計」による観測データの正確性を測定することが目的です。

その中でもATCの設置場所については、海辺で雨風が強い、特に設置条件の厳しい場所を使わせてもらいました。その環境下で大きなトラブルが無かったことは、耐久性のテストの面でも、1つの収穫になっています。

●実証実験の成果は、どのように感じていますか?

まず、大阪市内にメッシュ状に配置した「縦型オールインワン型IoT降雨計」によって、期待していた基礎実験データは取得できました。また、アメダスの観測計との比較においても、同等の観測結果が抽出できましたので、こちらも一様に満足しています。ただ、昨年の観測時期に観測地点で、いわゆるゲリラ豪雨レベルのものが少なかったので、その点は引き続き、実証実験が必要だと考えています。

●このような降雨計が多く設置されることで、社会にはどのようなメリットがありますか?

先程もお話した通り、アメダスの観測計は設置区間の距離が遠い分、詳細な地域ごとの情報を取得するのは難しい状況です。また、近年急激に増えだしたゲリラ豪雨については、検証するための基礎データもまだ多く取得できていません。当社の「縦型オールインワン型IoT降雨計」であれば、低コストで広範囲に設置することができ、各地域でのデータ取得が可能となり、今後のゲリラ豪雨の予測解析にも役立てると考えています。

またメッシュ状に配置することで、降雨の流れの予測も可能だと思っています。正確な降雨予測が可能となれば、土壌雨量による崖崩れの予知や灌漑、水撒きなどにおいても有効です。また小売業などにおける販売予測や集客予測などにも活用できるのではないでしょうか。
当社としては、今回の実証実験結果をエビデンスとして、このようなデータや情報を活用して、どのようなビジネスモデルを構築できるかをパートナー企業とチームを組んで考えていきたいと思っています。パートナー企業は現在も募集中です。

●今後の課題や予定について教えてください。

まずは今回の実証実験の結果のデータノイズなどを調整して、正確なデータを取得しなければいけません。加えて、今後や実証実験や実用化を目指して、設置箇所を増やして行く予定です。とりあえず、2024年中には100箇所は設置したいと考えています。

その場合にハード面では、製品の量産化が1つの課題です。できれば、大阪のものづくり企業の方々と協力して、量産体制を整えて行きたいと思っています。また、それと共に設置場所の交渉も必要です。理想的なのは行政や自治体を通じて、電柱や消防署などの公共施設の一角に取り付けてもらえれば有り難いですね。それ以外にはコンビニやホームセンターなどにも地域防災に貢献する観点で、設置に協力してもらえれば企業イメージのアップにもつながるのではないかと思っています。

私の試算では1.5km間隔で設置すれば、大阪市内で99箇所、大阪府内では475箇所になります。このくらいの数が設置できれば、より有効的なデータが取得できるので、ぜひ実現したいと思っています。

取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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