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vol.34

株式会社Mirai Innovation 研究所

株式会社Mirai Innovation 研究所
ペナロサ・クリスチャン 氏 Mirai Innovation 研究所

株式会社Mirai Innovation 研究所
ペナロサ・クリスチャン 氏 Mirai Innovation 研究所

日本、関西、そして大阪を愛するメキシコ出身のCEO

『Mirai Innovation 研究所』の代表取締役社長を務めるのは、メキシコ出身のペナロサ クリスチャン氏。「大阪や関西の雰囲気が好き」と話す彼に日本で起業した経緯を伺うと、流暢な日本語でわかりやすく話し始めてくれた。

「高校、大学をアメリカで過ごして、15年くらい前に日本へ留学で来ました。日本では大阪大学で修士課程を終えて、その後、認知神経科学ロボット工学の博士課程を取得しています。日本を選んだ理由は、昔からロボットをはじめとした技術レベルが高い日本に興味があったからです」

「アメリカの大学ではコンピュータエンジニアリングを専門としていましたが、日本に来てからはロボットと人工知能。そして博士課程では認知神経科学という脳波の研究を専門としています。これらすべてが現在の事業に関係していますね」

考えるだけで、さまざまなモノがカタチになる未来の技術

『Mirai Innovation 研究所』の事業コンセプトは、その名前の通り、未来の社会に役立つ新技術を作り出すことにある。

「私たちのサービスは『研究』『開発』『コンサルティング』『アカデミックトレーニング』を軸として、健康・教育・環境・エンタメなど、さまざまな分野の未来に役立つものを作り出しています。専門とするのは、AIや機械学習などの『人工知能』やAR・VRなどの『拡張現実』。『ロボットシステム』におけるハード・ソフトの設計、そして私の専門領域でもある脳波を分析する『ニューロセンシング技術』などです」

そんな同社が展開するプロダクトには、さまざまな未来を感じさせるものがいくつもある。

「2023年度から参加して、2024年3月にもイベントが開かれた咲洲テック・ラボ・プログラムで展示したのが『Wavex』です。これはリアルタイムで利用者の脳波分析を行い、パーソナライズされたVR体験を提供できるヘッドセットになります。『Wavex』はさまざまなユースケースで利用可能ですが、咲洲テックプログラムではヘルスケアとウェルネスを想定して展示しました。ヘルスケア分野では記憶力や集中力を向上させる認知トレーニングのパーソナルエクササイズを準備しました。バーチャル空間に表示された自動販売機でルールに従って商品選択をするプログラムなのですが、単純だけど意外に難しいです(笑)。これらは将来的に介護施設などで高齢者に利用していただき、外出できなくてもバーチャルで買い物などを体験してもらうことで、認知力の低下を防ぐサービスになると考えています。利用者の脳波をリアルタイム分析して、すぐに個々のレベルに合わせて内容が変更できることがポイントですね」

同社のサービスでは、すでに大学や工業分野向けにプロダクトアウトしている製品もいくつかある。

「『Aura』は脳波分析システムです。このツールは脳から直接電気脳波(EEG)信号を取得して、送信、そして視覚化までを前例のない精度で実現しています。これもリハビリ、スポーツ、エンタメなど多くの分野で活用でき、いろいろなアプリケーションと連携することで、多彩な使い方ができると考えています。これまでの例でいえば、ボクシングの世界チャンピオンに装着してもらいながら、音楽を聞いてもらうことで、どの音楽を聞いたときがもっと良いパフォーマンスを発揮できるかを知ることができましたし、アーティストに装着してもらい、頭で音楽をイメージしてもらうことで楽曲制作が可能にもなっています」

「『Aura』は、その他にも利用者にメッセージが流れるモニターを閲覧してもらえれば、どこに表示された、どんなメッセージが最も響いているのかがわかったりします。さらにリハビリ分野においては身体機能のサポートも可能です。怪我などで身体が不自由になった人などでも、『Aura』を装着して身体を動かすイメージをすることで、その動きをサポートすることもできるんです」

こうしたプロダクト製品の開発以外にも、同社は『アカデミックトレーニング』として海外の学生向けの日本留学プログラムの提供や、それらの学生に向けて簡易的な衛星作りを通して、センサーやプログラミングを学んでもらう『J-CanSat』などの学習キットの開発・販売も手掛けている。

魅力は手厚い支援。海外交流や事業展開にも有効な場所

TEQS入居のきっかけは、知人とのつながりからだと話すクリスチャン氏。世界に向けて事業展開していることもあり、いろいろな面で入居メリットも感じているそうだ。

「TEQSの魅力は、とにかく支援が手厚いことです。なかでも、たくさんの人を紹介してもらったことは、大いに助かっています。その上でイベントの出展依頼や案内も多くありますし、補助金などの支援プログラムについても情報提供してくれるので嬉しいですね。補助金については準備方法や申請書類の作り方においてもサポートしてくれて本当に助かりました」

「また海外留学生の事業では、これまでにメキシコやアメリカ、オーストラリアなどから約80名を受け入れています。このような留学生が日々活動する場所として、TEQS内のセミナールームなどを活用させてもらっていますし、海外からのクライアントを招く場所としてもミーティングルームを利用させてもらっています。こうした人たちを受け入れるだけのスペースがあるのは、魅力的で良かったと感じている部分です」

各製品で本格的なビジネスモデルを構築。万博でさらに世界へ

クリスチャン氏は今後の展望についても、さまざまな未来を見ている。

「現在の当社の収益の柱となっているのは海外の学生向けプログラムです。しかしながら、今後は『Wavex』や『Aura』でも、しっかりと売上を立てていかなければいけません。なかでも『Wavex』は本格的な販売に向けて、ビジネスプランや特許関係などを整理して実行していく必要があります。その点においても専門家の紹介などで、TEQSにも協力してもらっているので助かっていますね」

「将来的には、それぞれのプロダクトごとで子会社を作ってスピンオフさせていく考えです。オフィスについても日本だけでなく、メキシコやアメリカ、ヨーロッパにも研究所を設けたいと思っていますし、すでにドバイには新たなオフィスを準備しています」

「また直近では、2025年の大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンへの出展が決まっているので、そちらでも『Wavex』を展示して世界の皆さんに体験してもらいたいですね」
掲載日 2023年4月17日
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)