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vol.31

ドローンソフトウェアで、多くの人に世界を伝える!

株式会社Red Dot Drone Japan
三浦 望 氏

株式会社Red Dot Drone Japan
三浦 望 氏

秋田、ベルギー、東京、シンガポール。ドローンが飛ぶまで

遠隔操縦、自律・自動制御、複数台のドローン協調制御などのドローンソフトウェア技術でビジネス展開している『株式会社 Red Dot Drone Japan』。その代表である三浦 望氏に、まずは世界を股にかけた創業までの経緯についてお話を伺った。

「プログラミングを始めたのは小学三年生の時です。今では珍しくないですが、私たちの世代ではかなり珍しい部類で、私みたいな人間のことをデジタルネイティブと呼ぶのだと思います(笑)。大学は地元の秋田大学へ進学し、情報工学を専攻。大学時代には多くのことを学びましたが、新設学部だったこともあり、逆に私が教える場面もありました。その後、大学院へ進学。大学院時代の研究テーマを、地元企業が商品化したことで、その企業へプログラマーとして入社しました。そこで6年間勤務した後、30代前半で上司と一緒に起業することを決意しました。起業した会社では、自分自身がやりたいコトをたくさん実現しました。その製品の中の一つに欧州へOEM提供が決まったモノがあり、その話がトントン拍子で大きくなっていったので事業売却を行い、私自身は開発拠点のあったベルギーで、そのプロジェクトを続けることにしました」

「ベルギーでも6年ほど勤めた後、そろそろ日本に戻りたいと思っていたタイミングで、縁のあった東京の企業に誘われて帰国。そこでの事業を手伝う中、シンガポール法人を立ち上げるという話が出たので面白そうだと思い、私が手を上げて、今度はシンガポールへ移住することになりました」

「シンガポールでも5年ほど務めましたが、また『自分のやりたいコトをやろう!』という思いが芽生えて退職を決意。その時に設立したのが、現在の会社のシンガポール法人『Red Dot Drone』です。ドローンに目をつけたのは、将来的に成長が期待できる分野であり、自分自身がこれに関わるべき!と直感したからです。父親がラジコン好きだったこともあり、私もドローンを購入して、シンガポールで飛ばしていました。当時はシンガポールも規制が厳しく、飛行区域は限られていました。そこで飛ばしていると、同じようによく見かける日本人がいて、話が盛り上がり、共同で会社を設立することになりました」

誰もが行きたい場所へ行けるドローン旅行を実現

シンガポール法人の設立から2年後の2019年11月には、日本法人『株式会社 Red Dot Drone Japan』を設立。本格的に日本でもドローン事業を展開していく。

「ドローン事業において、いくつかのプロダクトやサービスがありますが、現在の主力事業となっているのが『遠隔操縦技術』を使用したものです。当社が開発したソフトウェアを利用すれば、特別な装置や機器は不要で、地球の裏側にあるドローンでも遠隔操縦することが可能になります」

「ドローンの遠隔操縦も、さまざまな用途が考えられますが、現在高い評価を受けているのがドローンによる遠隔旅行体験です。これは近年注目されている『アクセシブル・ツーリズム』を実現するもので、高齢者や身体障害者など、移動やコミュニケーションにおける困難さに直面する人々のニーズに応えながら、誰もが旅を楽しめることにつながると考えられます」

「すでに東京や兵庫などで高齢者や身体障碍者を中心に、実証実験や実際のサービスとして、ドローンでの遠隔旅行体験をしてもらいました。例えば、奥多摩や八丈島、大島などの健康な人でもなかなか行けない場所の上空を操縦してもらい、利用者からは非常にポジティブな反応をいただいています。このサービスのポイントは『利用者がご自身で操作できる』ところ。高齢者の方だけでなく、小さなお子さんでも操縦可能です。利用者が行きたい方向、観たい方向に向かってドローンは動きます。しかし、実は操作自体は、弊社のソフトウェアで再度解釈され、安全に飛行できるように修正されて自動制御しているのです。そのため、どのような方でも安心安全に遠隔旅行を楽しんでいただけるサービスとなっています」

フィールドスポーツの分析に役立つドローン事業

ドローン事業では『IoT・ロボットビジネス実証実験支援プログラム』にも採択されている、空撮によるスポーツ支援プラットフォーム『SkyCoach(スカイコーチ)』も興味深いサービスとなっている。

「SkyCoachは、サッカー・ラグビー・アメフトなどのフィールドスポーツにおいて、トレーニングや試合風景などを、安全で簡単に撮影するためのドローン制御アプリです。このサービスのポイントとなるのが、まずパイロット資格のない人でも簡単にドローン操縦ができること。ドローンが“フィールドに入らない、グラウンド外へ飛んで行かない、タッチラインから外れない”ということをアプリ側で自動制御するため、操縦者は左右の移動だけを操作すれば大丈夫です。また撮影した映像内のデータビジュアライゼーションを行うことも可能で、選手の立ち位置やそれぞれの距離感などを視覚化・数値化し、分析することができるようになります」

2025年を見据えて、TEQSでの活動をスタート!

国内だけでなく国外でも起業してきた経験を持つ三浦氏が、この大阪南港のインキュベーションオフィスを選んだ理由は、やはり2025年に開催される大阪・関西万博があるからだ。

「直近では京都のシェアオフィスを利用していました。そんな中、VCの出資者から『せっかくだから大阪・関西万博での展示を目指したら?』という助言があり、私自身もそろそろ大阪へ行きたい気持ちもあったので、WEBなどでインキュベーションオフィスを探して見つけたのが、『TEQS』でした」

「入居して良かったことは、いろいろありますが、まずオフィスが良いですね。部屋が広くて使いやすいスペースですし、賃料も安くて助かります。それに、フェリーが停泊している港が一望できるロケーションも気に入っています。この開けた景色が見えるだけで、だいぶ仕事をするときのテンションが違ってきますね。また、入居者に対するビジネスサポートの充実も魅力です。さまざまなことを相談させてもらっていますし、実証実験などについては事務局側から積極的に案内をしてもらえることは有り難いです。さらに、入居の目的でもある大阪・関西万博にもつながるようなお話をさせていただいているので、かなり助かっています」

「今後の事業展開としては、現在好調な『遠隔旅行』と『SkyCoach』の両輪を中心に進めていく考えです。それらを進めながらも、3つ目の柱となるような事業も育てられればと思っています。課題としては人的リソースの不足ですね。主に開発は私一人が行っているので、協業してくれるエンジニアやパートナー企業などがいれば、ぜひお声掛けいただければと思います。あとは、南港や舞洲は本当にドローン事業には適したロケーションなので、もう少し法整備が進んで、この環境が活かせられるようになったら最高ですね」
掲載日 2023年04月06日
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)