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vol.25

日本の英語教育にイノベーションを起こす

クリ8エデュケーション株式会社
高見 佐知 氏

クリ8エデュケーション株式会社
高見 佐知 氏

英語に経験を活かし、グローバル人材育成を

「元々は学校の英語教員でした」と話すのは、クリ8エデュケーション株式会社、代表取締役の高見佐知氏。英語教員を勤めた後、ハワイの教育局やアメリカ本土の大学院へ、公立学校の教育システムを学ぶために渡米した経験を持っている。「アメリカは多民族多文化における教育先進国で、さまざまなルーツや文化を持つ子どもたちへの教育においては、日本と比べて破格に進んでいました」。

昨今では日本の学校でも、多種多様なルーツを持つ子どもたちも増え、多文化教育へのニーズは高い。高見氏は、そうした日本の社会背景に対応するアメリカ式教育プログラムやカリキュラムの提供を、別活動の『公益財団法人未来教育研究所 研究開発局長』として、今も行っている。

その一方で帰国後は、英語教員のキャリアやアメリカでの学びを活かし、グローバル人材の育成に従事。自治体の教育センター所員となり、教育委員会では公立学校の英語教員に向けた『英語の指導方法の研修』などを担当してきた。

それらの研修を実施する中で、現在のクリ8エデュケーション株式会社の起業を思い立ったと話す。「これまでは英語の指導方法を含めて、いろいろな研修を実際に集まって行うリアル研修で行ってきました。この研修を時間の取りづらい教員や時代の流れに合わせてオンライン化できればと思い、この会社を起業しました」

AIDORアクセラレーションで事業プランを再構築

TEQSインキュベータオフィスに入居したのは2019年5月。「起業を検討している段階で、大阪産業創造館で開催している起業セミナーをかなり受けました。その中でATCを事務所として利用できるインキュベータオフィスがあることを教えてもらったのが、ここに入居したきっかけです」。入居から1ヶ月後の2019年6月には法人登記。「TEQSインキュベータオフィスに入居してから1ヶ月経過していると、登記費用の半額が支援されるのも有り難い特典でした」。

さらに高見氏は、AIDOR共同体が運営するAIDORアクセラレーションプログラムにも参加を決めた。「AIDORアクセラレーションには2019年7月から8期生として参加しています。このプログラムがTEQSで行われることも入居を決めた理由の一つでもありますし、実際にここでの学びが現在の事業展開に大きく影響しています」

COEQLでEQをベースとした英語力育成

インキュベータオフィスに入居当初の事業プランは、“VR/MRを使ったオンライン英語研修システムの開発”だった。「最初は英語の指導方法を学びたい教員に向けて、私が作成したオンラインの研修プログラムを、VR/MRを使いオンラインで提供するイメージでした。しかし、AIDORアクセラレーションでメンターの方々や技術者の方と話をする中で、私の想像する研修プログラムを実現するのは資金面・技術面において、現状は難しいという判断となり、事業プランを再構築しました」


そして生まれたのが、『グローバル人材の育成に向けて、COEQL(コエクル/Collaborative Online Emotional Quotient Learning)でEQ(感情知能)をベースとした英語力育成に取り組む』という、現在の事業コンセプト。「VR/MRと手法は変わっても、やりたいことにブレはありません。collaborativeな学習環境において、感情知能をベースとした学習を行うことで、英語力はもちろんですが、人の気持ちを感じ取るソーシャルスキルを伸ばし、グローバルに活躍できる人材を育てていきたいと思っています」

教員向け『COEQL英語研修』のオンライン化

現在の具体的な事業内容のひとつは、中学校・高等学校の教員向け『COEQL英語研修』。

「日本の英語教育は大きな転換期です。これまでの詰め込み式の英語ではなく、実際に使える英語力が求められています。その中で英語授業にも変化が求められ、高校では英語で指導を行い、中学でも基本的には英語で指導を行うことが求められています。しかし、すべてを英語で話せば、英語力が上がるという訳でもありません。英語で指導する際にも、コツがあります。そのノウハウを英語教員の方々に教えています」

『英語による指導方法の研修』については、自治体に勤めていた時からつながりのある大学教授とコラボレーションし、研修プログラムの内容を構築してきた。「現在は、この英語研修を東京などでリアル研修として実施しています。COEQLをベースにオンライン化していくことを、今後の事業展開として捉えています」

日々忙しく過ごす教員たちが、こうした研修を続けるために必要なのが「collaborativeな環境」だと高見氏は話す。「それぞれの教員が個別に学ぶだけでは続けることが難しいでしょう。だから、例えば期間を3週間と決めて、一緒に研修を受ける教員同士がコミュニティとなり、お互いが励まし合いながら続けられるオンラインの仕組みを作っていきたいと考えています。こうしたcollaborativeな環境による学びの優位性は、私がアメリカで実体験として得たことでもあります」

学生にはゲームのように楽しめるコンテンツを

そして、もう一つ事業の柱として成長させていきたいのが、中学生・高校生を対象とした『COEQL英語教材』の開発だ。

「現在、大人向けにはCOEQL講座として、ChatWorkを利用した英語教育プログラムを実行しています。こちらも英語を学びたい人でコミュニティを形成するのが基本です。コミュニティの中に私がトピックスを投げかけ、お互いが思い思いの発言を英語で書き込みコミュニティが活性化していきます。3ヶ月間、ほぼ毎日書き込みを行うのですが『こんなに英語の勉強が続いたのは初めて!』という声を多数いただいています」

しかし、中学生・高校生向けには違った視点でのコンテンツ開発を考えていると、高見氏は話す。「学力向上で一番大切な要素は『楽しい』と思える気持ちです。日本ではやるべきことがあり、我慢して続けていけば、楽しさが見えるという忍耐が求められます。しかしアメリカのプログラムではどのようにして『楽しい』を確保できるかに焦点が当てられていました。だから私も日本人の英語教育に『楽しい』という気持ちが湧いてくるようなコンテンツづくりを目指しています」

コンテンツの具体的な内容については、現在開発中ということ。「学生にはEQ育成を重視しつつ、得点や成長の見えるゲーム性のある協働的な学習プログラムを想定しています。昔、私の弟たちが母親に『ゲームばっかりして、いい加減にしなさい!』と怒られていましたが、私のコンテンツによって『英語の勉強ばっかりして、いい加減にしなさい!』と言われるくらいにしたいですね(笑)」

掲載日 
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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