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vol.23

ドローン撮影に特化した、空撮映像のプロフェッショナル

株式会社大光
大野 勝男 氏

株式会社大光
大野 勝男 氏

商社マンからフォトグラファー そしてドローンのプロフェッショナルへ

さまざまなキャリアを持つ大野氏に、まずはフォトグラファーになったきっかけを伺った。「私は千葉県出身で、子供の頃から水泳をやっていました。ソウルオリンピックの金メダリストである鈴木大地さんとは同じスイミングスクールで、昔は“大ちゃん”と呼んでいましたね(笑)。大学生の時にはパンパシフィック水泳選手権でライフセービングの日本代表に選らばれました。大学時代はライフセービングに明け暮れる毎日でしたね」。その後、大野氏は神戸の商社に勤務する。「30歳の時に須磨海岸で身体を焼いていたとき、ちょうどライフセービングのイベントを開催していました。そこで、昔馴染みの方にお会いしてライフセービングの普及に尽力されている姿を見て、『私も何かしなければ!』と思い、次の年にフォトグラファーなっていました(笑)」

それからフォトグラファー歴として17年のキャリアを持つ大野氏は、近年ドローンを使った撮影に力を入れている。「現在でも行っていますが、元々はスチールカメラの撮影がメインでした。それが時代の流れと共に、映像撮影の需要が高まり、最近ではドローンを使った空撮映像の依頼が増えています」。

大野氏は2015年ごろからドローンを使用した空撮を本格的にスタート。「私自身、今までとは違う視点で撮影できるドローン撮影には興味がありました。最近ではテレビ局からの空撮依頼も多く、テレビ番組用にドローンで撮影した4K映像が、大阪万博の誘致映像にも使われたりもしました」

ドローンのインフラ点検に 未来を感じて会社を設立

ドローン撮影の需要の高まりを受けて大野氏は、2018年4月に『株式会社大光』を設立。「知人の紹介で鉄鋼会社のインフラ点検をドローンで行う仕事の依頼がありました。それが会社設立の大きなきっかけです。このように建造物の点検やメンテナンスなどでドローンを使用することは、今後も増えていくと予想されます。また国土交通省も『i-Construction』として最先端技術を駆使して効率化やコスト削減を推進していることもあり、その部分において私も社会貢献できればと考えています」

株式会社大光では、ドローン撮影だけでなく映像編集、許可申請、開発なども手がけている。「ドローンの操縦は独学で始めましたが、しっかりとした技術を習得するためにスクールにも入りました。そこで出会った師匠には、今でもよく相談します。そうしたつながりを持ち続けているとブレインも広がっていくので、仮に一緒に仕事する場合でもお互い安心です」。

ドローン撮影の魅力やメリットについて、大野氏は次のように語る。「まず利点は今までとは違う視点で物が見られること。例えば、ゴルフ場のカレンダー撮影でドローンを飛ばした時に、ゴルフ場を上からの視点で見ることで、コース設計の意図がよくわかって面白かったですし、クライアントにも喜んでもらいました。また最近では災害時の状況確認にも有効的です。地震や台風で被害の出た屋上を確認する場合も、わざわざハシゴで登って危険な作業をすることなく、どうゆう状況なのかがよくわかります。先日も重要文化財のお寺をドローンで撮影しましたが、こうした貴重な建物にも損害を与えずに確認できるのもメリットです」

許可申請や機体開発 AI、IoTでも経験豊富

ドローン撮影でネックとなる許可申請においても、大野氏の経験は豊富。「ドローンを飛ばす許可申請も、ほぼ私が行っています。所有している機体は日本全国どこでも飛行できるように包括申請済みです。それでも市街地や住宅地で飛ばす時などは、安全面やプライバシーの問題もありますので、許可申請がとても重要になります。実際のドローンの飛行時間は10分程度なのですが、事前に近隣の方への説明や警察署などへの許可申請などで、場合によっては準備に1ヶ月以上の時間がかかる時もありますね」

さらに、現在推し進めているインフラ点検事業では、ドローンの開発・製作も手がけている。「インフラ点検の現場では『GPSが利用できない』などの過酷な条件があり、市販ドローンでは対応できない場合があります。そうした場面にも対応できるような特殊ドローンにおいては、目的に応じて、当社と提携しているエンジニアと一緒に開発・製作を行っています」。

また、大野氏はAIDORアクセラレーションプログラムの受講生でもあり、IoT・ロボット実証実験支援事業の『AIDORエクスペリメンテーション』では、おおきにアリーナ舞洲でドローンを使用した実証実験を実施している。ドローンで建物を撮影し、2Dの画像データから3Dデータを生成。1年後に再度データ収集し、経年劣化や建物における不具合などを確認するという。「建物の3Dデータを取得する場合、ドローンにレーザースキャナーを搭載し、点群を発信して建物をスキャニングする方法があります。しかし、その場合レーザースキャナーが2000万円ほどするので、かなりの高コストになります。そこで当社ではドローンで撮影した2Dデータから、解析ソフトを利用して3Dデータを生成する方法を現在開発中です」

ドローン×ライフセービング 新しい取り組みにも挑戦

TEQSインキュベータオフィスに入居したきっかけについても大野氏に伺った。「きっかけは産創館のセンサ展に参加後、購読をはじめたメルマガでここの情報が掲載されていたことです。見学に来て、『ここはいい!』と思ったので、すぐに入居を決めました。同じフロアによく似た立場のプロフェッショナルな人々がたくさん集っているのが良かったです。そうした入居者の方々と一緒に何かできればと思っていますし、今もいくつかコラボレーションするイメージも持っています」

また、入居者に対してのメリットも多いと大野氏は話す。「個人的には3Dプリンターなどの機器が使用できるので、試作機の部品づくりで活用できるのもメリットです。またAIやIoTに関するセミナーが無料で受講できるところも良いですね。セミナーを通して新しい情報が得られますし、時には一緒に入居者している方が講師として登壇されるので良い刺激にもなります。私も将来的にドローンセミナーの講師として登壇することがあるかもしれませんね(笑)」

最後に今後の展開について大野氏は次のように語った。「フォトグラファーになったきっかけは、写真を通じてライフセービングを世の中に広めていきたいと思ったからです。私自身、ライフセービングをやっていたおかげで、子どもが急に体調を崩した時に応急処置ができて、心の底から良かったと思いました。だから今でもフォトグラファーという仕事通じて、ライフセービングが認知され、水難事故を減らすことができればと思っています。また、今後はさらにドローンを使った警備や救助活動などについても、新しい取り組みに挑戦していこうと考えています」
掲載日 
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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