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vol.21

IoTの根幹を担うセンサ事業で業界トップクラスの技術力

ホルトプラン合同会社
林 泰正 氏

ホルトプラン合同会社
林 泰正 氏

センサ・センシング分野において トップクラスの技術力を有する企業

現在、ホルトプラン合同会社の事業の柱は大きく分けて3つあると林氏は話す。「1つがセンサ・センシング事業で、これは大阪市の『大阪トップランナー育成事業認定プロジェクト』でもあります」。ホルトプランではセンサデバイスやセンサシステムの開発・設計を行っており、特に気流や輻射熱を計測する小型センサでは業界でもトップランナーの技術力を持つ。「今、世間ではIoTが話題で、Society 5.0がキーワードです。Society 5.0を実現するには情報の収集、伝送、蓄積、分析、活用が求められ、例えば分析においてはAIを使った研究を大手中心にさまざまな企業が取り組んでいます。しかし、この情報の流れの根幹である『情報の収集』を行うセンサ・センシング分野は未発達な面も多く、大手企業の参入も限定的ですので、私たちのような企業にもチャンスがあると考えています」。

ホルトプランではさまざまなセンサ技術を有しているが、中でも特許権を持つ風速センサや風向センサは、小型・軽量・低コストで、将来的の高いオリジナル製品。「風速センサを利用することで0~20m/sまでの風の量や、風向センサを利用することで3軸方向での風向き測定が可能です。現在はエアコンへの装着や居住空間での利用を見据えて、家電メーカーでの実験利用や、学術機関のデータセンターで試験利用などが行われています。将来的にはさらにローコスト化して、BtoC向け製品を含め、新たなマーケットを創造する考えを持っています」

また、温度や湿度の測定に加えて、どれだけ熱を受けているのかという“輻射熱”が測定できる『輻射熱センサ』を使って、熱中症対策・作業性向上用ウェラブルセンサモジュールも開発中。「現場作業者や農業従事者の熱中症や日射病を予防するためのもので、各個人の心拍や服内温湿度、身体の傾き、運動量などをセンサにより計測し、作業管理者はネットワーク経由で各作業者の状況把握が可能となります。こちらは製品化を進めており、2019年中には販売開始予定です」

農業に関する知見を活かした 国や自治体からの受託事業も

次に林氏が事業の2つ目の柱として挙げたのが『環境制御(農業ICT)』。「農業ICTとして、温室やビニールハウス内の環境を最適化し、植物の発育を促す装置・制御機の開発、システム設計、設置、メンテナンスも行っています。温室の状態を表示・解析できる高機能モニタリングソフトウェアの開発も手がけており、2017年には神奈川県農業技術センターに納入し、全49棟の温室のモニタリングやデータ管理をしています」

そして、3つ目の柱となっているのが『受託研究・受託開発』。特に、農業分野では高い専門知識を持つ林氏のキャリアを生かして、内閣府主導の『戦力的イノベーション創造プログラム(SIP)』の受託研究事業も請け負っている。「SIPではトマト用コナジラミ類忌避効果音防除装置の開発チームに参加しています。トマトの難病である黄化葉巻病の原因となるのがコナジラミです。この害虫駆除のためには農家の方が1週間に1度、薬を散布する必要があり、その労力とリスクに悩まされています。その解決方法として音響防除装置を使い、コナジラミの繁殖や機能を低下させる方法を、筑波大学や埼玉県農業技術研究センターと共同開発中です。当社の主な役割は実用機器の開発ではありますが、コナジラミが苦手とする音を探し出す研究段階から関わっています」。
その他にも2018年10月からは、内閣府による『PRISM:官民研究開発投資拡大プログラム』で、『人工知能を活用したきめ細やかな栽培環境を実現させる計測・制御ユニットの開発』の研究チームにおいて、学術機関や企業を束ねるサブリーダーとしても活動するなど、国からの受託研究の実績も多い。

林氏にとって5つ目の スタートアップ企業の今後

「これまで企業の立ち上げに役員として参加しては、起動に乗ったところで抜け、また別の会社の立ち上げに参加するという感じで、いくつかの企業のスタートアップに関わってきました」。そして林氏は、2015年10月15日に、起ち上げたものでは3社目となる『ホルトプラン合同会社』を設立した。当初は梅田のシェアオフィスなどを利用していたが、2018年1月からはTEQSのインキュベーションオフィスに入居。「ものづくりなど作業が必要な時は、自宅を作業場にしていた時期もありました。しかし、大阪市内で打ち合わせして、自宅に戻って作業するのは非効率。ただ地元でオフィスを借りてしまうと、外との交流がしにくい環境にもなりがちなのでTEQSに入居を決めました。クライアントや取引先へは『オフィスはATC』ですぐに伝わりますし、本格的なスタジオの音響設備が整っていることも当社にとってはメリットです。また、実証実験のことは入居以前から知っていたので、そちらが実施しやすくなるのも入居した理由のひとつでした」

最後に今後の展望について、林氏は話してくれた。「事業の三本柱はそれぞれ注力していますが、その中でも最も成長の期待できるのがセンサ事業です。この分野では、現在も業界トップクラスの技術を有していますが、今後も必ず1つ2つとトップのセンサ技術を持ち続けるよう強化します。また、農業ICT事業でもトップを狙い、売上高としては3年後を目処に10億が目標。それに伴って、これまで以上に営業戦略をしっかりと確立するのが目下の課題です。パートナーシップや協力企業に関しては、“意識して望めば、自然と結果はついてくる”という私の信念のもと、自然と良い出合いに恵まれると信じています」


掲載日 
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)

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