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> 株式会社リモートアシスト 藤井 慎一 氏 株式会社リモートアシスト
vol.30
ユニバーサルデザイン思考で、社会をアシスト!
株式会社リモートアシスト
藤井 慎一 氏 株式会社リモートアシスト
株式会社リモートアシスト
藤井 慎一 氏 株式会社リモートアシスト
障がい者の遠隔援護サービスを考案して起業
2021年7月からTEQSインキュベーションオフィスに入居を開始した「株式会社リモートアシスト」。ウェアラブルカメラとスマートフォンを活用した『遠隔支援サービス』を展開する同社の代表取締役である藤井慎一氏に、まずは創業に至るきっかけについて伺った。
「前職のパナソニック株式会社での経験が、現在の事業につながっています。パナソニック時代は主にAV機器のマーケティングを担当しておりました。その中でテレビの操作方法を音声で案内する『音声ガイダンス』機能を、ユニバーサルデザインの考え方で周知する活動などを行っていました。そこで意外だったのが、視覚障がい者の皆さんがこの機能を高く評価してくれたことです。私のイメージでは、目の不自由な方々はラジオを愛用されている印象でした。しかし実際にはTVも副音声などを利用して楽しんでおられました。TVの操作方法が紙の説明書だけではわかりにくいので、音声ガイダンスがウケたんですよね。」
「同じ時期にウェアラブルカメラを取り扱ったプロジェクトにも参加していました。ある日ウェアラブルカメラの映像を見ながら音声でサポートする、視覚障がい者への遠隔援護サービスを思いつき、会社へ働きかけました。ただ、当時の会社の考え方もあり、それならば『自分でやろう!』と思い、55歳で早期退職して創業したというのが、きっかけです」
利点を生かしてBtoBサービスにも着手
2017年の退職後、すぐに株式会社リモートアシストを設立した藤井氏。1年後の2018年10月には視覚障がい者向けの遠隔援護サービスをスタートさせる。
「遠隔援護サービスは、目の不自由な方に耳にかけるタイプのウェアラブルカメラを装着してもらい、インターネット経由でサポートボランティアやご家族の方が、カメラ映像を見ながら代読や説明を行うサービスです。利用者の操作負荷を減らすためにカメラのボタンはひとつのみという、ユニバーサルデザインとしています」
しかしながら、やはり視覚障がい者に特化したサービスだけでは、ビジネスとして厳しいものがあったと、藤井氏は話す。
「ただ、その点は織り込み済みでもありました。当社の製品は目の不自由な方でも簡単に利用できるユニバーサルデザインをコンセプトとしているので、高齢者やIT機器に不慣れな方でも利用していただきやすいサービスです。その利点を生かして、製造・建築・土木などの現場作業者向けの遠隔支援カメラシステム『リモートアシスト』というBtoB向けサービスを、2019年秋頃からスタートし、現在は多くの企業様にご利用いただいています」
「BtoBサービスの開始時は、当社のビジョンでもある『ニューノーマルな働き方に変えていく』を目標とし、働き方改革に寄与するツールとして捉えていました。各企業様には本サービスによって、現場OJTや人材育成を効率的に行ってもらうことを狙いとしています。2019年から2020年にかけて展示会への出展やWEBサイトのリニューアルを行い、2020年夏頃から少しずつ認知してもらったことで、問い合わせ件数も徐々に増えてきました。また新型コロナウイルスの影響もあり、リモート環境でのニーズがさらに高まっていることも感じております」
遠隔支援カメラシステム『リモートアシスト』は、サービス開始から2年半で、約250社の企業へ導入されており、導入件数は現在も増加している。
「多いのは製造分野でのご利用です。国内や海外に工場をお持ちの企業様が、品質管理や技術指導の用途として導入されています。また、最近は建築・土木分野での利用も多く、管理者が現場の状況を把握するためだけでなく、「国土交通省の遠隔臨場」の仕様にも適合しています。その他メンテナンス業や教育機関、警備業などでもご利用いただいておりますが、今後、特に注力したいのは医療分野です。現在、ある整形外科の先生から技術の伝承や手術の効率化を目的として、手術中の術者目線の映像を研修医や看護師と共有したい、という要望をいただいています。コロナ禍においては手術の立会いも難しくなっている現状もあり、医療分野でのニーズは高まっていくと考えています」
コロナ禍でも大いに感じるTEQSの魅力
現在はTEQSインキュベーションオフィスに入居して約半年が経過したところと話す、藤井氏。この場所にオフィスを構えたきっかけと、メリットについても伺った。
「元々、大阪産業創造館の起業支援スペース『立志庵』の卒業生なんです。立志庵卒業後は、視覚障がい者の方と一緒に製品開発していたこともあり、盲導犬も一緒に利用できる広めのオフィスを南森町に借りていました。その方との業務が一段落したところで、広いオフィスに私一人となったので、自宅で作業をしながら別の場所を探していた時に、立志庵の担当者からTEQSをご紹介いただき入居することになりました」
「入居時からコロナ禍なので、他の入居者さんとの交流は少なめですが、メリットは大いにあると感じています。まずは、この場所にオフィスを構えていることによる周りからの信用度が違いますね。クライアントが来社してくれた際には、併設されている5G X LAB OSAKAを紹介すると、非常に興味を持っていただけますし、将来的に当社のサービスを5Gで運用する際の知見や情報なども蓄積されるメリットもあります。あとはTVやメディア取材を受ける場合にも、デモが行いやすい環境なので、とても助かっています」
製品の特性を活かして、課題を克服
最後に、現在の課題や今後の展望について、お話しいただいた。
「まだまだ駆け出しの企業なので、地固めをしつつ、将来を見据えた動きをしなければいけないと思っています。競合他社もいくつかあり、それらの企業とは規模やマーケティング力に差があります。しかし、他の企業のサービスが高度な技術や機能をウリにしている一方、当社は誰にでも使いやすいユニバーサルデザインの考え方をコンセプトにしているので、そのニーズを求める方々へ的確に情報を伝えるように工夫したいと思っています。また、今後需要が高まる5Gへの対応も急がなければいけません。これについては開発コストも必要なので資金調達の課題もあります。資金面については、ものづくり補助金の活用やIT導入補助金の導入支援事業者として登録することで、良いサービスの開発と提供に努めていきたいと思っています。将来的にはスタッフを増やして雇用創出に貢献し、事業承継やIPOできるくらいの魅力ある会社にしていきたいですね」
掲載日
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)
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