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2018年12月12日実証実験

【実証実験インタビュー】歩行支援用パワードウェア『HIMICO』の階段でのアシスト効果の検証

 

実施主体
株式会社ATOUN
http://atoun.co.jp/

実証実験名
歩行支援用パワードウェア『HIMICO』の階段でのアシスト効果の検証

2018年8月21日(火)、27日(月)の2日間に分けて、株式会社ATOUNによる「歩行支援用パワードウェア『HIMICO(プロトタイプ名)』の階段でのアシスト効果の検証」がアジア太平洋トレードセンター(ATC)の地下1階から地上12階まで階段部分を利用して行われました。

 

#今回の実証実験で使用された「歩行支援用パワードウェア『HIMICO』」は、どのようなものですか?
まず当社は、2003年に松下電器産業株式会社の社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」により設立された企業です。着るロボット「パワードウェア」をはじめとした、人の運動能力をアクチュエータのパワーや制御技術などで補助(または拡張)するパワーアシスト機器を通じて、働く人たちに新たな価値と可能性を提供することで、性別や年齢による体力差が差別や障壁とならず、誰もが持てる力をスムーズに発揮できる“パワーバリアレス社会”の実現をめざしています。

今回の実証実験で使用したのは、歩行支援用パワードウェア『HIMICO』です。『HIMICO』は腰部の筐体と両膝を結ぶワイヤーを電子制御で伸縮することで、人間が歩く時の動作の負荷を軽減し、歩行を支援します。従来のパワードウェアに比べてコンパクトで、人の関節の動きに合わせた自然な可動域を実現していることが特徴です。また、身体の表面に沿ったデザインなので、衣服の下に装着することもできます。

主な利用方法としては、筋力や運動機能が低下した高齢者の歩行を助けることを目的として研究・開発を勧めています。

 

#今回の実証実験の概要と目的を教えてください
実証実験の期間は2018年8月21日(火)、27日(月)の2日間です。両日ともに5名の被験者に『HIMICO』を着用してもらい、ATC・ITM棟の地下1階から地上12階までの階段を昇降してもらいます。また、非着用の状態でも同じく階段の昇降を実施します。その際、被験者に呼気ガス計測と心拍数計測の装置を取り付けてもらい、それぞれ昇降中の数値を計測。呼気ガス量を測定することで、1分間のエネルギー代謝量が算出可能となります。その上で、着用時と非着用時の数値を算出し、エネルギー代謝量の比較を行い、着用時にどれだけ代謝量が減少しているのかを検証し、歩行支援用パワードウェアとしての有効性を確かめるのが目的です。

 

#なぜATCで実証実験を行おうと思ったのですか?
2018年5月に、この歩行支援用パワードウェアのプロトタイプである『HIMICO』は完成しました。その過程において、性能実験として社内に設置したトレッドミルの「坂道」を再現しての実験や、足元が不安定な「砂場」で実験を行った実績はありました。

しかし、最も利用性が高いと思われる「階段」での実証実験は未経験でした。というのも、今回の数値測定にはある程度、運動時間の継続性が必要で、短い計測時間では数値が安定せず、正確な実験結果が得られません。正確な数値を測定するには、概ね5分程度は同じ運動(階段昇降)を続けることが必要となります。それには10階以上の建物で実験を行うしか方法はなかったのですが、なかなか利用承認してくれる施設を見つけることができませんでした。そんな時にプロジェクトメンバーが、IoT・ロボットビジネス実証実験支援プログラム「AIDORエクスペリメンテーション」の情報を見つけ出し、ATC規模の施設で実験ができると知り、初めて「階段」での実証実験を行うことになりました。

 

#実証実験の手応えは、どのような感じですか?
まだ初日の二人目を終えた段階(取材時)なので、詳細な数値は算出されていませんが、良い手応えを感じています。また、今回の本試験に先立って、予備試験としてプロジェクトメンバーが同様の条件で実験してみたところ、『HIMICO』の着用時と非着用時で、平均値で10%程度は着用時にエネルギー代謝量が減少した結果が出ています。今回の最大の目的である機器としての有効性を推し量るという点においては、ポジティブな結果が出ていると思います。

 

#今後の展開を教えてください。
2019年中にテストマーケティングを開始する予定で、本格的な商品化に向けて、ブラッシュアップを重ねていきます。例えば、現段階の『HIMICO』は総重量3.5kgで、駆動時間が約1時間程度です。今後は、さらに実験を重ねて、製品に最も適したパワー、駆動時間、軽さなどを検証していきます。場合によっては駆動時間を短くしてバッテリーを軽量化し、全体の重量を軽くすることも考えています。また、衣服と同じ感覚で着用してもらう狙いもあるので、SMLのサイズ展開も構想中です。将来的には、AI技術も駆使して、オートマチックで利用者にフィットするものにできればとも思っています。

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