vol.22
IoTで『ストレス社会をしなやかに私らしく生きる』を実現する
株式会社プロジェクト・ルネサンス
玉置 典利 氏 |
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株式会社プロジェクト・ルネサンス
玉置 典利 氏

米国有名大学が開発した 『Spire』の国内販売権を獲得
17年以上にわたり、コーチングのプロとしての経歴を持つ玉置典利氏が、2016年に設立した株式会社プロジェクト・ルネサンス。IoT技術を使って、これまで困難とされてきた人が抱える“ストレス”を見える化し、そのストレスを軽減することを目的にビジネス展開している同社の代表取締役社長、玉置典利氏に話を伺った。
まず、株式会社プロジェクト・ルネサンスの事業コンセプトについて、玉置氏に話を聞いた。「基本的にはIoT事業で、さらに専門的にいえばIoB(Internet of Body)事業となります。身体のセンシングを通じて、さまざまな問題を解決していく企業です」。株式会社プロジェクト・ルネサンスでは、人間の無意識状態の生体データを収集し、その際のストレスを測定、さらにストレスを軽減することを事業目的としている。
そのストレス測定のキーデバイスとなるのが、アメリカのスタンフォード大学カーミング研究所が7年をかけて開発した『Spire(スパイア)』。株式会社プロジェクト・ルネサンスは、このSpireの正規販売店契約を結んでおり、現在、日本国内で販売できるのは同社とアップルストアのみとなっている。
「Spireは服やズボンに装着するだけで、利用者の上半身の拡張と伸縮をセンシングします。呼吸の長さや吸うまでの時間などを測定し、利用者が“ストレスを感じているのか?”や“リラックスした状態なのか?”ということがわかるウェアラブルデバイスです。原理は詳しくお伝えできませんが、非常に複雑なアルゴリズムで解析されており、世界1,000人以上の医師や医療従事者から推奨されています」。利用者がストレスを感じた場合には、本体のバイブレーション機能により、ストレス状態であることを通知してくれる。さらに、センシングデータはリアルタイムに測定され、Bluetoothを介して利用者のスマートフォンへ送ることもでき、GPS機能により、いつ・どこでストレスを感じたのかも記録できるそうだ。
現在はSpire利用促進に努め、 未来のビジネス展開を見据える
株式会社プロジェクト・ルネサンスは、Spireを2018年6月から日本の法人向けに販売を開始。さらに法人企業向けのデータ管理アプリケーションの日本版カスタマイズも開発・販売や、プロコーチとしてのキャリアを活かしマインドフルネスのコンテンツ制作なども行っている。「販売開始から半年間で、テスト利用も含めて約400個を販売してきました。今後は個人向けも販売が可能となったので、さらに利用者を増やしていきます」と玉置氏。将来的には20万人程度の利用者数を目指しており、利用者のデータ管理も行う同社としては、そのビッグデータを元にさまざまな業界や企業へのアプローチも視野に入れている。
「現代社会の中でストレスは切っても切れないものだけに、さまざまな分野で注目されています。例えば、生命保険会社であれば、Spireでストレス度を測定することで、被保険者の心身状態を知ることができ、保険料の査定をする際にも有効でしょう。また、運送業や看護・介護職、教育従事者など、ストレスを感じやすい業種や職種の方々を雇用する企業や団体でも、今後利用してもらえる可能性は高いと思っています」。
多くの資産が活用でき、 信用度が高まるのがメリット!
株式会社プロジェクト・ルネサンスは大阪産業創造館の「創業チャレンジゼミ」に参加し、ビジネスプランのブラッシュアップを重ね、2016年12月に独立起業。同時期には「AIDORアクセラレーション」も受講し、IoTを活用したビジネスモデルを構築していた。TEQSに入居したのは2017年2月。「入居のきっかけは、大阪産業創造館の方からのご紹介です。入居して一番感じるメリットは、やはり『信用度が高まる』ということ。ココにオフィスがあるだけで、取引先からの当社に対する信用度が違っていると感じます。ATCという場所の知名度も高いですし、応接室やライブラリーなどが利用できることで、お客様を安心して迎えることができます。こうしたメリットは、他のスタートアップ企業の方から、よく羨ましがられます」。その他にも、IoTや経営などに関するセミナーが無料で受講できることや、同じビル内にある大阪デザイン振興プラザ(ODP)とTEQSが連携していることにより、展示会で使用する販促ツールなどを低コストで制作できるメリットも大きいと、玉置氏は話す。
また、入居することにより人脈が幅広くなり、事務局からピッチや展示会参加の案内があることもメリットだと言う。「TEQSをはじめ、その他のピッチや展示会のオファーをいただき、いろいろな場所でビジネスを紹介し、多くの人と出会う機会をもらっています。そのおかげで、事業に関する引き合いもいくつかいただいています。今後は、それらの話を上手くビジネスとして結びつけていくことが課題のひとつです」。
最後に、TEQSへ入居を検討する方にメッセージをいただいた。「ここには幅広い人脈があり、多くのスペシャリストがいらっしゃいます。とにかく、人的な資産がすごい。抱えている悩みに対して、聞けば、誰かが教えてくれますし、場合によっては新たなアイデアをもらうこともあります。私たちは大阪市やTEQSの資産を活用させてもらいながら、ビジネスを進めていると感じています。皆さんも、そうした資産を上手く活用させてもらったら良いのではないかと思いますね」
掲載日
取材・文 中西 義富(Office Vinculo)